Web3×AIの事例

ー書籍の中でWeb3×AIの30の事例が紹介されていましたが、注目している事例を教えてください。

大植氏-Web3の事例は世の中に多くは存在しないのですが、その中でアメリカのノリの事例を紹介します。

ノリは、いわゆるカーボンオフセットの取り組みを行っている企業です。この会社が行うWeb3のサービスはその畑を持っている農家さんに対してどういうインセンティブを与えましょうかという所から来ていて、それを実現するために「NRT」という独自のトークンと暗号資産の「NORI」、そしてそれらの取引市場を作りました。

そして、ノリは農場の炭素除去推定値を測定し、トークンとして管理することによって唯一無二であることを証明しています。企業がその権利を購入する場合にはドルで暗号資産を購入し、対象のトークンを入手します。農家はそのトークンをCO2クレジットとして企業に販売し、暗号資産を入手します。暗号資産はドルに変換しても良いのですが、カーボンオフセットの市場価値がどんどん上がっていけば、その価値も上がる可能性があります。

暗号資産をホールドしておくことによって数年後に価値が数倍へ跳ね上がることもあり得るでしょう。トークンを売って終わりではなく、その後も農家などの暗号資産保有者に対してメリットが生まれるような仕組みを作る動きが始まっているといえます。ちなみにノリは、すでに100万ドル以上分の暗号資産を農家に対して支払っており、今後もその規模を拡大していくでしょう。ノリ自体は取引市場でのトランザクションに応じた手数料を収入としています。

さらに追加要素で言いますと、ノリで実装しているわけではないですが、農場などの衛星データをAIで分析し、正確な炭素除去量を測定する技術も生まれています。このようにWeb3とAIを掛け合わせたテクノロジーも今後ますます増えていくでしょう。

今後の日本企業におけるAIの展望について

ー今後の日本企業におけるAI活用の展望を教えてください。

大植氏-私がエクサウィザーズに入った4、5年前は、大企業から見ると「AIで何ができるのか」や「使ってみてどんな良いことがあるのか」など、効果を確かめるフェーズだったと思います。

ただし、現在ではその理解は進んでいてビジネスで実際どのくらいの価値を還元できるのかというようなPoCに価値を感じなくなってきたのを肌で感じています。しかし、日本の大企業が持っているデータの量と質が共にとても少ないことも事実です。だからこそ、私は日本企業におけるAIの伸びしろがかなりあると感じています。

現在AIを使いこなせている企業は、基本的にWebサービスを運営している会社ですが、日本の多くの会社はアナログなプロセスで、現在必死にデータを集めようとしています。ここ数年企業はその取り組みを続けているので、データが溜まっていけば「AIが使えますよ」という状況のマーケットがどんどん広がってくると思っています。

様々なレポートからも引用しているのですが、今後の各テックの市場規模は、Web3やそれに関連するメタバース、SasS なども伸びると考えています。ただ、結局のところAIが最も飛躍的に伸びると言われていまして、まさに今まで各企業が収集してきたデータの価値が飛躍的に高まると予測しています。