宇宙に地球以外の知的な文明はあるのでしょうか?

これは夜空を見るとき誰もが抱く疑問でしょうが、これを真面目に探索する研究プロジェクトがあります。

そして、現在もっともそれらしい電波が、太陽系にもっとも近い別星系プロキシマ・ケンタウリから確認されています。

研究者はその分析に非常に慎重になっていますが、果たしてこれはエイリアンの文明が放った電波と考えていいのでしょうか?

目次
プロキシマ・ケンタウリから来る人工的な電波
どうやってエイリアンの信号だと見分けるのか?

プロキシマ・ケンタウリから来る人工的な電波

太陽系に一番近い恒星からの「ナゾの電波信号」は、 地球外生命体が発信したのか?
(画像=2つの惑星を持つプロキシマ・ケンタウリのアーティストイメージ。 / Credit:Lorenzo Santinelli,MIT Technology Review、『ナゾロジー』より引用)

説明の付かない無線信号は、太陽から4.2光年離れたプロキシマ・ケンタウリから確認されました。

この星系には、最低でも2つの惑星の存在が確認されていて、1つは木星のようなガス惑星ですが、もう1つの惑星「プロキシマb」は地球より約17%重い岩石惑星で、水が保持できる気温のハビダブルゾーンに存在しています。

この星系から、2019年に「BLC-1」と名付けられた奇妙な電波が拾われたのです。

奇妙と言われる理由は、「BLC-1」が982MHz(メガヘルツ)という限定的な帯域の電波だったからです。

通常、宇宙の電波源となるクエーサーや、パルサーなどの天体は、非常に広い周波数成分を持つ信号を放ちます。

単一の周波数の電波を発する自然現象というものは確認されていません。それが起きるのは人間の技術が電波を生成した場合だけです。

つまり、この電波は非常に人工的なものに見えるのです。

さらにこの電波源は地球に近づいたり、遠ざかったりしていることが示されています。

これは、電波源が星を周回する惑星から来ている可能性を意味しています。

これは、プロキシマ・ケンタウリの赤色矮星が頻繁に起こす巨大フレアを観測していたオーストラリア、パークス天文台の観測データの中から見つかりました。

データ処理を手伝っていた学生ショーン・スミスは、人工的な電波を宇宙から探してエイリアンの存在を見つけようという研究プロジェクト「ブレイクスルー・リッスン (Breakthrough Listen)」のメンバーで、観測データの中から今回の「BLC-1」を発見したのです。

「ブレイクスルー・リッスン」は、シリコンバレーの投資家ユーリ・ミルナーが1億ドルの資金提供をして開始されたもので、エイリアンの信号を求めて2016年から10年間で数百万の星を探査しています。

そんな人工的な電波が、地球から一番近い星系で発見されるというのは、なんともできすぎた話です。

もうしそうなると、天の川銀河には、かなりの知的文明がひしめいていると考えなければなりません。

統計的にいえば、私たちの銀河には5億以上の異星文明が存在しなければおかしいことになってしまうのです。

そのため研究者たちも、それらしい電波を見つけたと喜びながらも、本当にエイリアンの電波なのか? という部分はかなり慎重になっています。

どうやってエイリアンの信号だと見分けるのか?

巨額の研究費を投じてエイリアンの信号を探す、というプロジェクトを進めながらも、研究者たちには人工的な電波の発見を手放しで喜べない理由があります。

それは人工的な電波とはつまり、地球の人間が放っている電波を拾ってるだけの可能性が高いからです。

Wi-Fi、GPS、衛星信号、とにかく地球には電波があふれかえっています。そしてそれを電波望遠鏡がキャッチしてしまうのも珍しいことではありません。

太陽系に一番近い恒星からの「ナゾの電波信号」は、 地球外生命体が発信したのか?
(画像=地球は人工の電波で溢れている。 / Credit:canva、『ナゾロジー』より引用)

5年前には、エイリアンの信号を捉えたと大々的に発表された観測電波が、天文台内で誰かが昼食に使った電子レンジのノイズだったと判明したこともありました。

地球上から宇宙の人工的な電波を探すという研究は、まさに針の山の中から、1本だけピンを探し出すようなものなのです。

「BLC-1」も思っていた通りの方角から来た信号ではないかもしれません。

執筆時(12/21)、土星と木星が非常に接近することが話題になっていますが、これは地球から見た場合という条件がついています。

実際2つの惑星は何億キロも離れていて接近はしていません。

しかし、このとき土星の放つ信号は、まるで木星が放っているように見えるでしょう。

プロキシマ・ケンタウリから来る信号も、本当にそこから来ているとは言い切れません。

ひょっとすると識別されていない人工衛星や、頭上を移動した飛行機、望遠鏡の視線に近い位置に設置された地上の送信機である可能性もあります。

場合によっては、観測所付近の建物が発生源であったり、近くを通り過ぎただけの車の電子機器の可能性もあるのです。

1977年にオハイオ州の天文台で受信された信号は、非常に人工的な電波に見えましたが、1度観測されたきりその後2度と発見できなかったということもあります。

太陽系に一番近い恒星からの「ナゾの電波信号」は、 地球外生命体が発信したのか?
(画像=ケンタウルス座α星(左)とβ星(右)。赤い円に囲まれた部分にプロキシマ・ケンタウリがある。 / Credit:Wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

結局は「BLC-1」は何らかの電波干渉であると特定される可能性が高いだろうと研究チームは考えています。

しかし、「そうした事例を積み重ねていくことが、真の外宇宙から来るエイリアンの文明を探す研究を強固なものにしていくはずです」とブレイクスルー・リッスンの主任研究員アンドリュー・シュミオン氏は語っています。


参考文献

SETI


提供元・ナゾロジー

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