英国政府の大型減税策が大幅なポンド安を招いたことは、国際的なマーケットからの信認を維持することの重要性を示唆しており、既に公的債務残高の対GDP比が高いわが国は、なおさらそのことを特に認識しなければならない。加えて、安全保障上のツールとして金融制裁を活用するケースが増えてきており、金融市場に強いストレスがかかった際、有事におけるわが国経済の安定を維持できる経済力と財政余力がなければ、国力としての防衛力がそがれかねない点にも留意が必要である。その意味で、防衛力の抜本的強化を図るには、経済情勢や国民生活の実態に配慮しつつ、財政基盤を強化することが重要である。

必ずしも経済の専門家ではないが、報告書の指摘は筋がとおっているように思える。加えて以下の結論部分には、大きく膝を打った。

歴史を振り返れば、戦前、多額の国債が発行され、終戦直後にインフレが生じ、その過程で、国債を保有していた国民の資産が犠牲になったという重い事実があった。第二次大戦後に、安定的な税制の確立を目指し税制改正がなされるなど、国民の理解を得て歳入増の努力が重ねられてきたのは、こうした歴史の教訓があったからだ。

そうした先人の努力の土台の上に立って、国を守る防衛力強化が急務となっているなか、国を守るのは国民全体の課題であり、国民全体の協力が不可欠であることを政治が真正面から説き、負担が偏りすぎないよう幅広い税目による負担が必要なことを明確にして、理解を得る努力を行うべきである。

いくら防衛費を増額し、「十分な数のミサイルを装備」しようとも、国民の支持がなければ、自衛隊は戦えない。

報告書が明記したとおり、国を守るのは国民全体の課題であり、国民全体の協力が不可欠であることを政治が真正面から説くことが最も重要な課題である。岸田内閣の使命は、この一点にかかっている。