スタノバヤ氏は、「野党だけでなく、プーチンの側近ですら、プーチンがどこを目指しているのか、計画は何か、ロシアは戦争に勝つつもりか、少なくとも負けないようにするのか、誰も理解していない。戦場での軍の退却と死傷者が増えるほど、それらの問いはより深刻になる。私たちは高速で移動する列車に乗っている。どこに行くのか誰も知らない。列車の運転手はトランス状態にある。怖い。だから、現状から脱出するためには、列車の速度を落とすか、方向を変えるか、または運転手を変えることを考えなければならない。しかし、プーチン大統領に代わる指導者は見当たらない。現在、システムは完全にプーチン大統領の管理下にある。プーチン大統領に真剣に立ち向かう準備ができている人間がいるとは信じられない」という。

ロシアの近未来については、全てがプーチンの支配下に留まる現体制の継続か、現体制をひっくり返す、プーチンの死、深刻な原発事故や飛行機の墜落事故などの惨事が起きるかの2通りのシナリオを挙げている。

同氏は、「プーチンを過小評価してはならない。彼は自分の感情に問題があり、ウクライナの状況に関連する全てのものに非常に敏感だ。同時に、運用上の問題について実際的に議論するために、いくつかの譲歩をする準備ができているようだ。プーチンが現実的な方向転換をする可能性は排除できない。彼は昨年9月、10月の時、『戦争に何としても勝たなければならない』という気持ちが強かったが、12月にはもうそのような気配は見られない。プーチンは今、落ち込んでいるように感じる。ひょっとしたら、欧米諸国との対立問題でより現実的な議論を行う道が開かれるかもしれない」と分析する。

その一方、「ロシア社会で将来、さらなる抑圧、投獄、言論の自由の抑圧が進行し、進歩的な思想家の出国などが進み、プリゴジンのような過激派の台頭が見られるかもしれない。ロシアの体制は徐々に内部侵食に直面し、国家はその任務を遂行できなくなる。プーチンは、2000年代に全てを個人の管理下に置いてきたが、年々、プーチンの国内の政治問題への関与は減少してきた。『軍事作戦』を除けば、プーチンが個人的に管理下に置いているものは何もない。他のすべての領域はいわば無人だ。プーチンの同僚や友人にとっても、彼に直接会って相談することはほとんど不可能だ。自分で解決策を見つけ、責任を負わなければならない。その結果、政治システムはより過敏になり、予測不能になり、衝突に満ちたものになる」と予測する。

戦争に関しては、「さらなるエスカレーションを求める急進派と、ロシアには勝利するためのリソースがないと認める現実主義者の2つの極の出現が見られる。全ては戦場の状況次第だろう。いずれにせよ、近い将来、良いことは何も期待できない」という。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年1月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。