ドイツがレオパルト供与問題で決定を避けたことについて、ウクライナのアンドリー・メルニク外務次官はヴェルト日曜版で、「大きく失望した。ベルリンはロシアからの攻撃を受けているウクライナへの武器援助において貴重な時間を無駄にしている。決定を渋るドイツ側の対応は不名誉といえる」と強調した。

一方、オースティン米国防長官は西側の同盟国に対し、ウクライナへの支持をやめないよう警告し、「今はじっとしている時ではない。軍事援助を強化する時が来た。ウクライナの人々は私たちを見ている。クレムリンは私たちを見ている。そして、歴史が私たちを見守っている」と述べ、「必要な限り、ウクライナを支援することは疑いの余地のないことだ」と付け加えた。

ただ、ドイツの主力戦車レオパルトのウクライナへの引き渡しに関する議論では、米国はドイツの立場を支持したという。オースティン国防長官は、ラムシュタイン会談終了後の記者会見で、「ベルリンは非常に長い間信頼できる同盟国であり、将来もそうであり続けると固く信じている」と述べている。近い将来のレオパルト2の供与を見据えての発言と受け取られている。

興味深い点は、米国は現在、エイブラムス型主力戦車の提供を考えていないことだ。米国は明らかに、ロシア軍の占領している全地域をウクライナが取り戻せるとは考えていないからだ。米国のマーク・ミリー参謀総長は20日の会議後、「軍事的観点からみて、ウクライナが今年、領土の隅々までロシア軍を追い出すことは非常に難しい」と語っている。すなわち、米国はウクライナ戦争を交渉のテーブルで終わらせるべきだと考えているわけだ。ロシア側の占領領土を全て奪い返すまで停戦交渉には応じないと主張するゼレンスキー大統領とは明らかにスタンスが異なる。

なお、ドイツがレオパルト2の供与を渋る背景について、私見を述べる。第2次世界大戦後、75年以上の年月が経過したが、ドイツには第2次世界大戦でのナチス政権の蛮行へのトラウマが依然ある。特に、ショルツ首相は冷戦時代の経験もあって、ロシアとの戦いを避けたい思いが人一倍強い。同首相は政権担当以来、「Zeitenwende」(時代の変わり目)という言葉を頻繁に口にし、ウクライナ戦争勃発後、軍事費の急増など安保問題にも積極的に関わってきた。紛争地のウクライナに重火器を供与してきた。ショルツ首相にとって自身のこれまでの政治信条とは異なる決定を下してきた。「Zeitenwende」がそのようにさせてきたというわけだ。レオパルト2の供与問題でも最終的にはウクライナ側の要望に応じる方向に変わるのではないか。同首相にとって、理想はレオパルト2の供与前にウクライナ・ロシア間の停戦交渉が始まることだろう。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年1月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。