近年各地の海で増加しているといわれるタチウオ。温暖化の影響が指摘されていますが、逆の例が指摘されることもあるようです。
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東京湾でタチウオが大漁
今年の冬、東京湾で例年にない大漁を記録している魚がいることをご存じでしょうか。その魚とはタチウオ。
タチウオは本来、西南日本で水揚げの多い魚。駿河湾などでは冬にも盛んに漁獲されていますが、東京湾では夏から秋にかけての魚で数もそこまでは多くありませんでした。
それがここ数年、冬にも水揚げがみられるようになっており、今年は特に多くなっているといいます。魚の水揚げが減ってしまう冬の時期に現れた「救世主」だとして喜ぶ漁師も少なくないそうです。
なぜタチウオは増えたのか
しかしなぜいま、東京湾でタチウオが増えているのでしょうか。原因として指摘されているのが「東京湾の温暖化」です。
タチウオは温暖な海域を好む魚といわれ、冷涼な海域の多い東日本では水揚げはあまり多くありませんでした。東京湾でも以前は湾口に近く、黒潮の影響で水温が高いような海域でしか漁獲がありませんでしたが、現在は湾最奥部の豊洲や浦安といった地域でも普通に姿が見られています。
また、東京よりはるかに北の宮城や青森などでも漁獲が増えているといいますが、こちらも近年海洋温暖化が著しいといわれている地域です。
温暖化で「減った」という地域も
このように「温暖化でタチウオが増えた」と言われるところがある一方で、タチウオが温暖化により減ったといわれているところもあります。それは日本海の対岸である韓国です。
韓国ではタチウオは「最も愛されている魚」で水揚げも多いのですが、ここ数年は不漁が叫ばれています。韓国周辺の海域でも、日本同様に海洋温暖化が報告されているのですが、当地ではタチウオの不漁の理由が温暖化と関連しているとする説が主流なのだそうです。
ただ一方で、温暖化に伴い韓国近海では「サバ」が増えているという報告もあります。タチウオとサバは互いに似た環境を好み、餌もほぼ同じであるため同じ環境にいると競合関係となります。そのため、温暖化によりタチウオに代わってサバが増える「魚種交代」が起こっているのではないかという気もします。
ただし、水温が全体的に上昇傾向にある日本の瀬戸内海でも、タチウオの不漁が起こっている地域があり、結局のところ温暖化とタチウオの増減は直接的に関係している訳ではないのかもしれません。
神出鬼没であるため、釣りの世界では「幽霊魚」と呼ばれるタチウオ。その動きや増減を読むのはやはり難しいものだと言わざるを得ません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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