加工食品には、病気からの回復力を阻害する働きがあるかもしれません。
豪シドニー大学(University of Sydney)の研究チームはこのほど、高度に加工された餌を与えられたマウスは、無加工の穀物を与えられたマウスに比べ、インフルエンザ感染後の死亡率が著しく高くなることを発見しました。
穀物を与えられたマウスは10日以内に回復したのに対し、加工食のマウスは病状がどんどん悪化し、実験個体のすべてが死亡したのです。
従来から実験動物には、加工された餌が「穀物ベースの餌と栄養面で同等である」との前提で与えられているため、この結果は動物研究において重要かつ広範な意味を持つでしょう。
研究の詳細は、2022年11月15日付で科学雑誌『Cell Reports』に掲載されています。
加工食を摂り続けたマウスは感染後に全滅
本研究は、実験動物を代表するマウスにおいて、感染症の回復期に摂取する栄養にどんな役割があるかを調べる目的で始められています。
実験では、マウスを2つのグループに分け、一方に穀物をベースとする生鮮飼料を、もう一方に加工度の高い餌(AIN93G飼料)を3週間にわたり与え続けました。
いずれの飼料もタンパク質、炭水化物、脂肪のエネルギー含有量は同じですが、原材料やビタミン、微量栄養素の含有量に違いがあります。
また、加工飼料は添加物などで精製されており、穀物に比べて食物繊維も少なくなっています。
それでも、マウスが病気にかかっていないときは、どちらの餌を与えても健康状態や普段の行動に差はありませんでした。
体重増加やエネルギー消費量の点でも違いは見られません。
(だからこそ、実験用動物にはこれまで加工された餌が普通に与えられてきたのです)

ところが、それぞれの餌を与え始めてから3週間後にマウスをA型インフルエンザウイルスに感染させると、驚くべき違いが表面化しました。
(※ 感染後も同じ餌を与え続けています)
まず、穀物飼料を与えたマウスは、感染直後に体重減少と食欲の減退が見られたものの、10日以内に通常に戻り、すべての個体が回復しました。
しかし、加工飼料を与えたマウスは、穀物食のマウスと比べ、感染後の体重減少と食欲減退が顕著であり、体調が回復することもありませんでした。
また、7日目以降の体温低下も著しく、9日目にはブドウ糖の取り込みが損なわれ、14日目にはすべての個体が死亡したのです。
なぜ加工食を摂り続けたマウスは全滅してしまったのでしょうか?