ジャーナリストは大統領にも保護を要請

ジャーナリストのひとりヌールデス・マルドナド氏は3年前にアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領の早朝の記者会見に出席して身の安全に危険性を感じているとして大統領に保護を要請した。彼女は以前勤務していた地方の放送局で不当に解雇されたことを法的に訴えていた。そのオーナーが上院議員になっており、彼女の身の安全を疑うほどに彼から脅迫を受けているということ。しかも、公判は6年続き一度は連邦裁で彼女に有利な判決が下った。ところが、それから3週間後にそれが覆されて彼女に不利な審判が下されたということ。そこで彼女は大統領に正当な公判を懇願し、彼女の身柄の保護も要請したというわけである。

今年1月20日、連邦法廷は問題の放送局の資材の差し押さえを命じた。彼女への賠償金の支払いを保障させるためであった。しかし、その2日後に彼女の遺体が車の中で発見された。彼女が勝訴したことへの報復措置であったのだ。

加害者の多くが公務員だ

問題は加害者の半数以上が公務員であるという皮肉な事実だ。2020年のデータによると、692人の身元が確認されている加害者の中で343人が公務員だという。その内の188人が地方の首長や議員、144人が警察官、11人が軍人ということが明らかにされている。即ち、本来は市民の権利を守るべき政治家、警察、軍人が犯罪組織と癒着してジャーナリストに危害を加えているということなのである。

だから、多くのジャーナリストは公的に告発をしようとしないのである。それをすれば逆に彼らから報復される可能性が高いからである。筆者の娘がメキシコに在住していた時も隣人の女性が一人失踪した。最初に関係者がやったことは彼らの出来る手段を使って捜査したそうだ。それでも解決しないので警察に捜査願いを出したということ。市民がなぜすぐに警察にコンタクトしないのかという理由は、警察もこの失踪事件に絡んでいるのではないかという疑いからであるという。メキシコでは警察は市民から信頼されていないということだ。

文・白石 和幸/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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