顧客・社員双方にとっての「幸せ」を追求し続ける

セールしない、余剰在庫もないアパレル「アルページュ」 会社もお客も「幸福な」理由
(画像=代表取締役社長の野口麻衣子氏、『DCSオンライン』より引用)

 インスタライブにも出演するアルページュの社員は、97%が女性社員。出産からの復帰率は実に95%と、時短勤務も含め女性社員がキャリアを犠牲にせず働きやすい環境を実現している。社長の野口氏自身も2度の出産を経験し、今も育児に奔走する「現役ママ」だ。

 「時短勤務でも会社に貢献できることはたくさんあり、社員一人ひとりに貢献の形がある。私自身も2児の母として毎日悩みながら働いているので、社員にとっていちばん身近なモデルケースでありたい」

 もともとアルページュの各ブランドのファンであり、「作る側に回りたい」という思いで入社している社員も多い。「ブランドづくりに参加していることを、社員が幸せと感じられることが大事」と野口氏は強調する。

 かつてのアルページュのファンが、入社してブランドを届ける側になり、結婚・出産などのライフイベントを乗り越えて楽しく働く。その幸福感がインスタライブや接客を通して顧客へも伝わっていく――そこには顧客と社員が相互にブランドへのエンゲージメントを高め合うスパイラルが生まれている。10年前に「セールをしない」と決断したことが、そのスパイラルを回す源泉になっている。

 「商品を通じてお客さまを幸せにしたい。そう考えたとき、たくさんの商品を売れ残りにすることは、売上の最大化はできても誰も幸せにしない。10年続けてきてそのことは確信している」

 2021年3月には、ECサイトと同じ名前で新ブランド「アルページュ・ストーリー」を立ち上げ、リアル店舗もオープンした。顧客・従業員それぞれにとっての「幸せ」を追求するアルページュの物語は、これからも続いていくだろう。

文・堀尾大悟/提供元・DCSオンライン

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