流行の発信者
ファーストレディのファッションは注目の的であり、大きな話題になることも少なくないが、女性のファッションや生活スタイルを新たに生み出し、リードするトレンドセッターの走りは、ドリー・マディソンである(USA Miller Center, Dolly Madison)。ドリーは美しい羽根つきのターバンとヨーロッパ風の優雅なドレスで裕福な女性たちを魅了し、ニューイングランドの政治家の妻が彼女を真似て高価な羽根2本を9ドル(現在の価値では200ドルくらい)で購入し、周囲を呆れさせたという逸話もある(White House Historical Association, Getting it Right)。

ドリー・マディソン 出典:National Women’s History Museum
ピンクは女の子/女性の色と見なされるが、実はこの観念は、第43代大統領ドワイト・アイゼンハワーの妻、マミーの「ピンク愛」に由来する。マミーは、1953年の大統領就任式後の舞踏会で着用したピンクのロングドレスを始め、ピンクの衣料を愛用したばかりか、ホワイトハウスやキャンプデービッドの寝室までピンクで彩るほど、この色を愛した(The White House, Mamie Eisenhower)。「マミー・ピンク」は、戦後の解放感と自由を謳歌する若い女性たちの心を掴み、彼女たちはこぞってピンクの服を身につけ、やがてピンクが女性と結びつけられ、女性のシンボルカラーになった(Vox, How did pink become a girly color?)。

1953年大統領就任式・舞踏会のマミー 出典:National Achieves

ホワイトハウス内キッチンのマミー(1958年)
現大統領の妻ジル・バイデンは、初めての兼業ファーストレディである。彼女は教育学の博士号をもち、2009年以来、現在もコミュニティカレッジで教鞭をとっている。21世紀らしいファーストレディの登場である。