動物のしっぽがなぜあるのか考えたことはありますか?
カンガルーのように第三の脚として機能するしっぽ、クモザルのように物をつかむことができるしっぽ、ウシなどのように糞にたかる虫を追い払うためのしっぽなど、多くのしっぽが生きていくための重要な役割を担っています。
それでは、人間にとって最も身近な動物であるイヌのしっぽはどうでしょうか?
嬉しいときなどにぶんぶんと振ってくれるイメージはあるものの、他の使い道は思いつかないという人が多いかもしれません。
今回はそんなイヌのしっぽの役割についての最新研究をご紹介します。
しっぽは何のためにある?
元々、しっぽは魚の尾びれが進化したものです。
魚だったころは推進力を得るために使われていましたが、爬虫類などでは四足歩行の舵取りに使われることが多くなりました。
その使い道は生き物の進化によって枝分かれし多様化したものの、長いしっぽには必ずといって良いほど重要な役割があります。
逆に、しっぽに使い道がないと退化して短くなってしまいます。
我々人間も二足歩行となったことで、歩く際にしっぽが邪魔になってしまい、結果なくなってしまいました。
肉食動物のしっぽの多くが「舵取り」の機能を持つ

前述の通り、動物のしっぽにおいて一番多い使い道は「舵取り」です。
高速で走る際や木に登るときなどにしっぽを使ってバランスをとる生き物は少なくありません。
特に、肉食動物はしっぽを巧みに使いながら方向転換し、走って獲物を追い詰めていきます。
高速で走るチーターが曲がる際にしっぽをぐるぐる振り回すのは有名な話ですよね。
イヌと同様に人間にとって身近な生き物であるネコも、走り回っているときやジャンプするときなどにしっぽで舵を取っている様子が見て取れます。
このため、イヌもまた運動時に体のバランスを取る際しっぽを使っていると考えられてきました。
しかし、イヌの運動としっぽの動きについて調べて見ると意外な事実が判明したのです。
イヌのしっぽは運動時に機能しない

マンチェスター大学のトム・ロッティエ氏らの研究グループはイヌのしっぽの働きを調べるため、モーショントラッキングを用いてイヌがジャンプする際の運動再現モデルを構築しました。
この再現モデルで、しっぽの配置を変えてジャンプのシミュレーションを行った結果、しっぽの配置によらずうまくジャンプすることができました。
つまり、ジャンプする際の体の安定とイヌのしっぽのうごきには関係性が見られなかったのです。
大きい犬ほどしっぽの比率が小さくなる

また、もしイヌがしっぽで体のバランスを取っているとなると、大きいイヌほど大きなしっぽを持っている必要があります。
しかし、イヌは大きいほど体に対してしっぽの大きさが占める割合が低いのです。
このことからもトム氏は「イヌは機動性のためというよりはコミュニケーションのためにしっぽを使っている」と話しています。
それでは、イヌのしっぽによるコミュニケーションにはどのようなものがあるのでしょうか?