自宅や職場の近くで工事が始まると、騒音でイライラしてしまうかもしれません。
いつもより大きな声でコミュニケーションを図りますが、どうしても仕事の効率が低下してしまいます。
こんな人間の「あるある」は、知的な動物であるイルカでも同じだったようです。
イギリス・ブリストル大学(University of Bristol)のペルニル・ソレンセン氏ら研究チームは、騒音がイルカたちの音声コミュニケーションにどう影響するかを調査。
するとイルカたちは、騒音下の人間と同じ様に大きな鳴き声で騒音に対処しようとしたのです。
研究の詳細は、2023年1月12日付の科学誌『Current Biology』に掲載されています。
イルカの会話を騒音で妨害する実験

イルカが高い知能を持ち、仲間と協力し合う動物であることは、以前から良く知られています。
そして彼らのコミュニケーションは、口笛のような「ホイッスル音」で成り立っています。
さまざまな高さや種類のホイッスル音を用いて、仲間にエサ場や敵の存在を知らせているのです。
このイルカたちの行動は人間の会話と非常によく似た「音声コミュニケーション」であり、研究者の間でも注目を集めてきました。
イルカのコミュニケーション方法が人間に似ているのであれば、それが妨げられた時の対応も人間に似ているかもしれません。
そこで今回ソレンセン氏ら研究チームは、イルカが騒音の影響をどのように受けるのか実験することにしました。
この実験では、事前に協力して行動するよう訓練した2頭のイルカが用いられました。
そしてイルカたちを実験場であるラグーン(水深の浅い水域)に放ち、ある課題をこなしてもらいました。

その課題とは、「ラグーンの両端にある水中ボタンを同時(1秒以内)に押す」というもの。
イルカたちはタイミングを合わせるために音声コミュニケーションに頼る必要があるのです。
ある試行では2頭のイルカが同時に放たれたため、そのままボタンに向かって泳ぎ、タイミングを合わせるのが比較的容易でした。
ところが別の試行では、1頭だけ解放のタイミングを5~10秒遅延させており、イルカたちは音声コミュニケーションだけに頼ってボタンを押す必要がありました。
そして研究チームは、これら一連の協力課題の成功率が、水中スピーカーから再生される騒音のレベルでどのように変化するか調査しました。