明暗を分けた要因は?
大きな違いは、落水後です。1件目の釣り人は、ライフジャケットを着用していて、落水後に磯場を見上げたら周りの人が電話しているのを確認。磯場に寄ると波で打ちつけられケガをしてしまうと判断し、意図的に少し離れたところで浮いて待っていたそうです。
そうしたら、周りの釣り人がちゃんと通報してくれて、さらに付近を航行しているアウトリガーカヌーを楽しんでいた方に救出要請。その方がレスキューし、事なきを得ました。一方、2件目の釣り人はライフジャケットを着用していおらず、落水後、直立した状態でバタバタ暴れていて、5分ぐらい経ったころには目測でおおよそ50mぐらい流され、暗闇に姿を消してしまいました。
ライフジャケットの重要性
両者の明暗を分けたのは、ライフジャケットの着用、未着用が決定的な要因だと考えています。とくに1件目のケースは、当事者が非常に冷静だったのですが、それもライフジャケットを着て浮いてられるという安心感が大きいと思われます。発生時の時間、天候や海況なども少なからず影響したでしょうが、最終的にはライフジャケットの有無が明暗を分けたと言えるでしょう。
江の島で起きる事故の特徴は?
釣り人の転落も多いのですが、それと並んで多いのが帰還不能です。干潮時に磯場を渡って観光を楽しんでいるうちに潮が上がって来た道がなくなってしまい、帰れなくなるケースが多発しています。ここ数年で件数自体が激増しているわけではありませんが、われわれが管轄している鎌倉から湯河原の範囲内では、江の島と真鶴半島の磯場に事故が集中しています。
事故を起こす人の傾向は?
30~40代が多く、50代よりも上は少ない傾向があります。釣り人ならば「もっといいポイントに行こう」「もっと釣れる場所に行こう」、観光客ならば「ほかの人よりも一歩先に行ってみよう」という気持ちが働いて無理しまうことが、結果として事故につながっていると推察しています。
釣り人特有の事故はある?
磯場で転倒してケガをしてしまったというケースも少なくありませんが、やはり海中転落と帰還不能が多数を占めます。帰還不能の場合は海中転落に発展しかねないので、「ちょっと帰れないぐらいはたいしたことではない」と安易に考えないでほしいです。
釣り人への啓蒙活動
江の島と真鶴半島を中心に、釣り人の多いところに出向いて、啓蒙活動を展開しています。ただ、個々人の意識が高まらないと海難事故は減りませんので、いくつかのポイントを打ち出しています。
具体的には?
まず、ライフジャケットの着用。2つめは、スマートフォンなどの連絡手段を持つこと。スマートフォンなどは、防水機能を備えた浮力のあるものに入れておくのが望ましいです。3つめは、遊んでいる最中でも、こまめに波の状況を確認すること。自分に押し寄せる波が安全かどうかをチェックしてください。そして最後は、潮の満ち引き、天気、波浪を確認すること。これらを大前提として海に出かけ、釣りや観光を満喫してもらえればと思っています。
取材協力:神奈川県警察本部 地域部地域総務課、横須賀海上保安部 湘南海上保安署、海上保安庁 第三管区海上保安本部(順不同)
<TSURINEWS編集部>
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