宇宙太陽光発電(SSPS)のプロトタイプが打ち上げられる

Caltechの研究チームは、2013年からSSPSの開発を続けてきました。

そして今回、SSPSプロトタイプである「宇宙太陽光発電実証機(PPSD:Space Solar Power Demonstrator)」を作り上げることに成功しました。

SSPS技術実証機のイメージ
Credit:Caltech

このコンパクトなプロトタイプ(技術実証機)の重量は50kgであり、これまでに考案されてきた様々なアイデアが搭載されています。

宇宙に打ち上げられた後に実証実験が行われ、開発された技術が検証・評価されるのです。

今回打ち上げられたプロトタイプは、いろんな技術を宇宙で実験するために打ち上げられるものです。そのため「将来目指すSSPSそのままの形状」なわけではなく、「技術実験するためのデバイスの寄せ集め」です。

太陽電池もいろんな種類のものを積んで、その効果を検証します。

実証機開発の様子
Credit:Caltech

プロトタイプには厳選された32種類の太陽電池が搭載されており、宇宙という過酷な環境に最適な「効率と耐久性の高い太陽電池」を比較検討します。

高効率で軽い太陽電池が実現されれば、SSPSを建造する際に宇宙に運ぶ必要のある建材を減らすことができるでしょう。

また、プロトタイプには折り紙にインスパイアされた実験用の折り畳み構造体が収まっています。

折り畳み構造体が展開する様子
Credit:Caltech

こちらも宇宙での展開実験が行われる予定で、実験機では6フィート×6フィート(1.83m×1.83m)の大きさになります。

研究チームによると、将来的にこれを1km規模で宇宙空間に展開するのが目標なのだとか。

(左)打ち上げられるSSPSプロトタイプ全体、(右)送電アレイのアンテナシート
Credit:(左)Caltech(YouTube)_Space Solar Power Demonstrator(2023)、(右)Caltech

さらにプロトタイプには、研究チームが独自開発した軽量で柔軟な送電アンテナが搭載されており、こちらの性能も宇宙で試される予定です。

そして2023年1月3日、SSPSプロトタイプは衛星打ち上げミッション「Transporter-6 」にて、宇宙に運ばれました。

このミッションではSpaceX社のロケット「Falcon 9」が打ち上げられ、114個のペイロードが輸送されました。

この中にSSPSプロトタイプも含まれており、打ち上げ後の数週間以内に実証実験が開始される予定です。

中には最長で6カ月間のテストが必要なものもあります。

それでも研究チームは「打ち上げから数カ月以内に実証機の性能を完全に評価できるようにしたい」と述べています。

SSPSには未だ多くの課題が残されていますが、それでも今回の進展は、夢が実現するための大きな一歩となりました。

「宇宙から電力が送られてくる」という未来が、確かに近づいているのです。

参考文献
Caltech to Launch Space Solar Power Technology Demo into Orbit in January