これらをみると日本を強化するのはM&Aよりも提携の方が手っ取り早いのではないかという仮説は成り立ちます。双方、良いところを持ち寄り、相手の領域に踏み込まず、です。ところが、日本はなぜか、一緒になろうという思想が常にあるのです。残念ながらほとんど、うまくいった試しがありません。なぜか、といえば主導権争いもありますが、各社の個性が強すぎて、作り出すものが妥協の産物の凡庸なモノになるからだと分析しています。
今、東芝の再建プランを日本産業パートナーズ(JIP)が取りまとめていますが、その出資者に広範な日本の大企業群が参加表明をしています。もう一つ、ラピダスという新しく生まれた日本の半導体メーカーも同様です。この会社はトヨタ、デンソー、ソニー、NTT、NEC, キオクシア、三菱UFJ、ソフトバンクというそうそうたる8社が出資し、最近ではIBMと提携して先端半導体を20年代後半にも展開する計画です。うまくいくか、と言われれば私は正直、ダメだろうな、と思っています。かつて成功した試しがないのですから、これなら成功するという理屈はどうやっても生まれないのです。
海外企業がM&Aでどんどん大きくなっていくのは買われた会社は新しいボスのもとでしっかり仕事をする切り替えができるのです。私の取引先などもこの3-4年で5、6社はオーナーシップが変わっています。しかし、それまでいた人たちはそのまま新しい看板の下で働けるのです。日本では排除の理論が先行します。買収とは経営者を蹴り落とすことである、と。
支配関係が上手に展開できる海外に対して農耕民族である日本人はシェアの思想が非常に強く、奇妙なところで個性が出てしまうのです。お山の大将と言われますがそれは買収された後でも継続する悪い癖があるとも言えます。
ならば、代替案として私は日本的企業連携を模索すべきだと思います。共同体的発想のようなもので例えば日本の建設業では一般化しているジョイントベンチャー(JV)は歴史的にみても機能しています。「同じ釜の飯は食わない」という前提の連携組織を作る、これが案外、将来の勝ち組ではないかと考えています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年1月12日の記事より転載させていただきました。