生モノの魚はたとえ冷蔵庫に入れても、保存期間や保存の仕方によっては腐ったり、おいしくなくなってしまう場合があります。今回はそんな魚の保存について詳しく解説します。
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魚の腐敗と熟成
まず、魚がおいしくなくなる、食べられなくなる主な原因は腐敗が進行するからです。まずは腐るというのはどういうことか解説していきます。魚の筋肉にはATP(アデノシン三リン酸)という筋肉の収縮などに関する物質が含まれており、呼吸によって生成されています。しかし、死んでしまうとATPは生成されなくなり、死後硬直の後、時間の経過とともにイノシン酸やヒポキサンチンなどに分解されます。
イノシン酸はうま味成分としても知られ、ATPの分解が進行するとともに増えてきます。この状態を【熟成】と言い、最近では意図的にこの状態にすることで美味しくする調理法も確立され始めています。
しかし、分解によって増えていくイノシン酸は永遠に増えていくわけではなく、限界まで分解されてしまうと、そこからは消化器の中にいた細菌や、外部から付着した細菌の持つ酵素によってさらに分解が進んでいきます。するとイノシン酸はどんどん減っていき、旨味もなくなり、私たち人間にはうまく消化することができなくなってしまうのです。これが腐敗、いわゆる【腐る】という状態なのです。
冷蔵庫では熟成が進む
細菌や細菌の持つ酵素は適度な温度や水分のある環境で活発に活動しますが、低温の冷蔵庫に入れることでこの活動は鈍くなります。この時、分解は完全に停止するわけでなく、限りなくゆっくりと進行しているので、一般的にはこのゆっくりとした分解を利用して熟成を行います。ですが、ゆっくりとした分解だからといって、あまり長時間放置してしまうと前述のように熟成は腐敗に変わってしまいますので、保存期間には注意が必要です。
冷蔵庫は乾燥もしやすい
また、冷蔵庫に入れることでもう一つ注意するべきは【乾燥】です。物体は温度が下がると飽和水蒸気量がドンドン低下していきます。つまり、冷蔵庫に入れ温度が下がるとともに、飽和水蒸気量も低下していき、魚の身から水分が抜けていってしまいます。
さらに、冷蔵庫内は水蒸気を外部に排出する機能が付いているため、適当に管理していると身から抜けた水分はどんどん冷蔵庫外に放出され、気づいたころには身はパサパサになってしまうのです。冷蔵庫で干物が作れるのは、この原理を利用しているからです。保存時にはこの乾燥にも気をつける必要があります。