北海道室蘭市の測量山(海抜約200メ-トル)の山頂に並ぶ6本の鉄塔。赤、黄、青…夜にまちを照らすライトアップは、市民の癒しだ。連続点灯1万日を超える。輝きを支えているのは、全国でも珍しい個人の寄付。冠婚葬祭など人生の節目を名目としたものが多く、最近ではテレビ番組で、室蘭出身の俳優安田顕さんが、善意を寄せたことで話題となった。それでも寄付者は減少傾向。沈みがちなまちを照らし続けたシンボルだけに、関係者は存続を強く願っている。
まちを照らして1万日
測量山のライトアップが始まったのは、1988年(昭和63年)。まちの一大行事むろらん港まつりにあわせて、北海道電力室蘭支店が、測量山山頂にそびえ立つ6本のテレビ局の中継アンテナに明かりを灯した。大企業の合理化が進み、人口の市外流出が止まらなかった当時。取り組みは「沈みがちな心を吹き飛ばせ」との〝サプライズ〟であったが、まつり終了後も存続を願う声が多く、2022年12月19日現在で、連続点灯1万2千440日。漆黒の闇に赤、青、白、金と4色で浮かび上がる鉄塔は、今やまちのシンボルとなっている。
連続点灯を支えているのが、市民らの寄付。誕生、入学、別れなど人生の節目に添えるメッセージとともに、事業を担う市民団体「室蘭ルネッサンス」に善意が寄せられる。添えられたメッセ-ジは、地元紙やラジオが取り上げ、機運を盛り上げている。
ヤスケンさんも協力
ライトアップに込められた寄付者の思い。地元紙では、週1回紹介コ-ナ-を設けている。2022年12月の欄を見ると、室蘭市出身の俳優でふるさと大使の安田顕(ヤスケン)さんの名があった。安田さんは、同年10月フジテレビの番組「爆買い☆スター恩返し」に出演。18歳まで過ごした故郷に還元を-と80万円を使い切る企画で、連続点灯があと20日分しかもたないことを知り、「2カ月分お願いします」。
テレビの前で多くの市民が驚いた。寄せられた善意は、11回分の点灯に活用。地域の明るい話題となった。「本日、お誕生日の皆さん、本日、結婚されたり、お付き合いしたり、好きな人がいたり、悲しかったり、嬉しかったり、そんな皆さんにこの灯(ともしび)を捧げます」=安田さんのコメント、地元紙のコメント掲載欄より引用=。
「貴方の役者人生が末永く輝かしいものでありますように」。8日の誕生日には、ライトアップに励ましを受けた、多くの市民から感謝のメッセージが寄せられた。