12月12日、日本航空(以下JAL)は、大分県・Sierra Space・兼松が取り組む宇宙往還機ドリームチェイサーの活用検討に向けたパートナーシップに新たに参画したことを発表しました。

ドリームチェイサーの活用検討にJALが参画
ドリームチェイサーとは、アメリカのベンチャー・Sierra Spaceが開発中の宇宙往還機です。Sierra Spaceは、ドリームチェイサーによるISSへの物資輸送をNASAから受注しており、2023年から運用が始まる見込みです。ドリームチェイサーの本格的な運用を前に、Sierra Spaceはアメリカやイギリスのスペースポートとも提携しています。
大分県・Sierra Space・兼松は、2022年2月にパートナーシップを結び、大分空港をSierra Spaceが開発する宇宙往還機ドリームチェイサーのアジア拠点として活用することを目指し、安全性・環境面の予備検証や経済波及効果など、具体的な検討を進めています。
JALは、これまでの航空輸送事業を通じて培われた知見やアセットを活用しながら、ドリームチェイサーの国内での事業開発やすでにJAL国内線が就航している大分空港における運用支援など、4者で協力し、本パートナーシップによる検討をさらに具体化させていく考えです。

JAL「安全安心の運航ノウハウ」共有で貢献目指す
12月12日に都内で開催された記者会見で、JALデジタルイノベーション本部長・野田靖氏は、今回パートナーシップに参画した理由について質問が挙がるとこのように回答しました。

「航空業界は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けて、従来の航空輸送そのものでの事業が大変厳しくなっているところでございます。あらゆる領域にチャレンジしているところで、この宇宙領域は非常に可能性のある領域だと承知しています。まだまだ道のりは長いかもしれませんが、果敢にチャレンジしていくこういう気持ちから、今回、このパートナーシップに取り組ませていただくことになりました」
具体的な取り組みの内容は今後検討されるということですが、JALの野田氏は
「例えばお客様を輸送する際の地上での取扱業務、いわゆる『グラウンドハンドリング』と申しておりますが、この領域で私どもの知見がお役に立てるものかと思っております」
「私ども航空の基本は安全安心の運航でございます。これは宇宙においても当てはまる領域でございまして、いかに安全安心で、人だろうが物だろうが、お運びする際の考え方は変わりませんので、そこの知見も大いにお役に立てるものだと考えております」
と意気込みを語りました。
ドリームチェイサーで実験サンプルを迅速に回収
国内のスペースポート開港を支援するSpace Port Japanの代表理事を務める山崎直子氏は、記者会見で公開されたビデオメッセージのなかで、大分空港がドリームチェイサーの着陸拠点として検討されていることのメリットをこう説明しました。
「宇宙往還機が日本に着陸をする機能を保有していくことは、日本が現在保有をしている基幹ロケットの宇宙輸送能力を補完することになります。宇宙で行われた実験の試料(サンプル)を直接、迅速に日本に着陸をさせることができるようになります」
ISS参加国のなかでも、日本は生物科学やバイオテクノロジー関連の実験を多く実施しています。
着陸時の衝撃が比較的小さい有翼式のドリームチェイサーで、アメリカを経由せずに実験サンプルを日本の空港で回収できるようになれば、重力の影響を受ける時間が短縮されることでより精緻な実験データを取得したり、実験の幅が広がったりすることが期待されます。
提供元・宙畑
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