6日は東方正教のクリスマスだが、ロシアのプーチン大統領は5日、翌6日正午から7日24時までに36時間停戦を実施すると表明した。それに先立ち、ロシア正教会最高指導者モスクワ総主教のキリル1世は、「主の降臨を祝うために当事者の停戦が望ましい」と述べ、クリスマス停戦をロシア軍に求めている。すなわち、クリスマス停戦はロシアの精神的指導者キリル1世からプーチン大統領に要請が届き、それを受け、プーチン氏がロシア軍に36時間の停戦を指示したかたちを取っている。実際は、プーチン大統領の要請を受け、キリル1世が大統領の停戦発表前に信者たちの前で停戦を要求したもので、その逆ではないだろう。

プーチン大統領の新年の挨拶(2023年1月5日、クレムリン公式サイトから)

もう少し憶測するならば、プーチン大統領のウクライナ戦争を全面的に支援しているキリル1世がロシア正教会ばかりか、世界の正教会から批判を受けていることから、プーチン氏は正教指導者としてのキリル1世の立場を考慮し、停戦案を先ずキリル1世がイニシャチブを取った型で発表させたのだろう。その意味で、停戦発表は、プーチン大統領とキリル1世の連携プレーとみてほぼ間違いない。

興味深い点は、キリル1世の停戦要求の前、トルコのエルドアン大統領が5日、プーチン大統領との電話会談で、プーチン氏に一方的な停戦を要請していることだ。トルコはプーチン氏がウクライナ戦争の仲介者として唯一認めている国だ。プーチン氏は停戦を公表する前に、エルドアン大統領に停戦意向をそれとなく伝えていたのではないか。エルドアン氏に外交ポイントを与えたともいえるわけだ。

いずれにしても、問題は、どちらが最初に停戦を言い出したかではない。なぜプーチン大統領は短時間とはいえ36時間の停戦をロシア軍に指令したかだ。考えられる理由は戦場で守勢を強いられているロシア軍の再編成だ。武器や食料の補給のためには戦闘中は難しいので、停戦を申し出、その間に実施するという純粋な戦略的な計算が働いているという見方だ。