完全な誤情報。公的な場で、かかる重要機関による、かくも明白で酷く間違った主張は類例が無い。なお悪いことに、この誤情報を正当化したのは世界気象機関(WMO)で、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)を設立した機関だ。

ロジャー・ピールキー・ジュニア教授米国の議会公聴会での証言時の写真(米国政府資料)

異常気象による災害が50年で5倍になったというのは、以前説明した下図に基づく言説だ。この「災害の報告件数増加」は気候変動によるものではなく、この間の世界の経済成長に伴って災害の報告件数が増えたためであることは、以前詳しくのべた通りだ。

このグテーレス事務総長の発言は、国連の「科学の下の団結(United in Science)」という報告書のリリースに当たってのもの。何という皮肉か、とピールキーは嘆いている。筆者も完全に同意する。

いま、公の場で気候危機説に少しでも疑いを挟むと弾圧の対象になる。ロジャー・ピールキー・ジュニア氏は何度も酷い目に逢っている。

だがその一方で、気候危機説を唱えてさえいれば、このような重要人物が明白な誤情報を流布することが許されるというのは、深刻な事態だ。

日本の政治家やメディアが同じことをしないよう、せいぜい目を光らせるとしよう。

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