第3位:創始麺屋武蔵
前編の第1位と第2位の「蔦」と「八五」は今年のラーメン業界に起きたショッキングな2大事件を引き起こした名店だったが、第3位以降はサクサク紹介していく。「蔦」の創業者の故大西祐貴もアパレル業界に身をおいたことがあったが、この麺屋武蔵の創業者の山田雄氏もアパレル業界出身者である。盛り付けなどにその片鱗があるのだろうか。なお山田氏は引退したようだ。すでにラーメン業界において一大チェーンになった麺屋武蔵グループだが、1996年に創業したいわゆる「96年組」だ。他に「多賀野」(荏原中延)、「青葉」(中野)、「くじら軒」(横浜市営地下鉄センター北駅)が96年組だ。久し振りに麺屋武蔵に入ったが、店名はその発祥であることをアピールすべく「創始麺屋武蔵」になっていた。さんま節をベースにした滋味溢れるスープや旨みのある太麺など昔のままなのが嬉しかった。
第4位:「楽観NISHIAZABU GOLD」(西麻布)
通勤している西麻布の路地裏にあるカウンター8席のみの店だがまさに隠れた名店だ。しばらく改装のために閉店していたが9月に再開。2019年のラーメン百名店に選ばれている。低加水中細ストレート麺に、カツオ節、昆布などの魚介系スープがベースで動物系は使っていないのではないか。鶏油が加えられているかもしれない。全く独自のスープで玉ねぎのみじん切りが加えられているが、この甘みが実に見事。
第5位:「らあめん 満来」(新宿)
これも久し振りの入店。夜の11時まで営業しているとは知らなかった。閉店間際の入店だったが、茹でるお湯は濁っていて替えて欲しかったし、客が少なかったためか店員も無駄話をしているし、もちろん無化調ではないし、全くもってなっていないのだが、出てきたラーメンは「これ、これ」と嬉しくなってしまう味なのである。たぶん「家系」がスタートする時に(「吉村家」がその元祖とされている)最も参考にした店だったと思う。
第6位:東大和ラーメン 大冬樹(だいとうき/東大和市)
隣町の東大和市に用があって出掛けた時入店したが、煮干しラーメンを注文したが、低加水麺のカラミもよく、こんな場所にこんなレベルの高いラーメンがあることに驚いた。
第7位:「らぁ麺やまぐち」(高田馬場)
現在このタイプのラーメンで繁盛店を目指すラーメン店が一番多いのではないかと思う。ストレート低加水中細麺に丸鶏スープ。小麦や醤油や塩にこだわった一杯。こうした店の中でもトップランナー店のひとつだ。ただしすでに突出した存在とも言えなくなっている。
第8位:ウニラーメン(スシロー新宿西口店)
すぐになくなってしまうオトリ商品や100円生ビール、そして値上げ攻勢で今年1年すっかり評判を下げてしまったのがスシローだ。そのせいか前のような30分以上待ちというのがなくなって、使い勝手がよくはなった。私は寿司ばかりではなく、麺類にも注目している。ラーメンでは鯛ラーメンとウニラーメンを食べたが、特に本物のウニをトッピングしたまぜそばがあのラ・ベットラ落合務オーナーシェフのウニのクリームパスタを思わせるような出来上がりになっていてこれは旨かった。
第9位:「中華そば 流川」(るかわ/新宿)
「らぁ麺はやし田」がメイン業態のINGSという企業が運営している店だが、やはり今のトレンドを取り入れてうまくアレンジしているラーメン店だ。マズくはないがコピー感が強過ぎて「旨い!」という感動には程遠いのだ。なんとなく「試験管で作ったラーメン」という感じがつきまとう。
第10位:「龍の家」(たつのや/新宿)
コロナ禍の前の2018年、2019年は野方(西武新宿線)に隔週ペースで入り浸っていたが、今年は新宿・小滝川通りに出没していた。前述の「創始麺屋武蔵」「流川」も小滝橋通りの店だ。その小滝橋通りで最長の行列を誇っているのが久留米市に本店をおく1999年創業のラーメン屋の「龍の家」だ。創業者は一風堂で修行したが、独立後はトントン拍子に店を増やして現在はアメリカ展開も含めて12店。セカンドブランドの「息吹」もスタートしている。さらにコメダ珈琲のFC、不動産、美容室、カラオケ店などの多角化経営。このアペックスコーポレーションの創業者は梶原龍太氏で龍の家の龍は創業者の名前から。すごい事業欲である。まずはラーメン屋で成功し海外へ進出し、さらに多角化にも成功というのが成功の道筋のようだ。ところでこの「龍の家」を含め3杯のとんこつラーメンを今年食べた。他に「でぶちゃん」(高田馬場)、「次男坊」(新宿西口)の2軒だが、どうもこの福岡とんこつラーメンというのがどれも同じ味に感じられるばかりか、「旨い!」と膝を叩くような旨さが感じられないのだ。この「龍の家」も同様。12月に初入店したのだが、ほとんどの客はこのとんこつラーメンではなくつけ汁にカリカリの豚モツが入っている中太のつけ麺を食べていた。いずれも豚の頭を丸ごと煮て作ったスープがベースになっているのだが、不味くはないが「旨い!」という感動からは程遠いのだ。
そもそもラーメン店での成功が次の多角化へのステップとしか考えていないような企業家にとっては、ラーメンがある水準まで行ったらそれ以上ラーメンのレベルアップを目指すというのは考えづらい。「龍の家」のとんこつラーメンはそうした味であった。不思議なのはそうした「龍の家」がこの小滝橋通りで最長の行列を誇っていることだ。私はこの行列に30分ほど並んでみたのだが、その日に限ったことなのか、その半数以上が中国人、韓国人であった。さらにラーメンにおいてはとんこつラーメンしか認めないという九州人たちが行列を形成しているのだろうか。この小滝橋通り店は2009年7月11日にオープンしているから、すでに13年が経過してこの人気である。隣には前述したINGS社による新規軸のラーメン店の「麦ゑ絞」が昨2021年8月21日にオープンしているが、いつ覗いてみても客はほとんど入っていないという悲惨な状況で閉店確実な情勢だ。
文・三浦彰/提供元・SEVENTIE TWO
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