ベネディクト16世は、外交官タイプの前任教皇ヨハネ・パウロ2世とは好対照で、書斎で本を読んでいる学者タイプの教皇で、信者への牧会には疎い面があったことは事実だ。

その教皇が突然生前退位を考え出したのは2012年秋ごろと推定される。生前退位の理由は「健康問題」と言われてきたが、ベネディクト16世は退位後10年余り、名誉教皇として生きてきた。神からペテロの後継者として任命された教皇職を自身の意思で放棄せざるを得ないほど深刻な健康問題を抱えていたとは考えにくい。退位理由は健康問題や聖職者の性的犯罪問題ではなく、「何らかの霊的な出来事があったからではないか」と一部で推測されてきた。

同16世は「神に何度も問いかけたが、もはや教皇としてその職務を履行できない」として、2013年2月11日、枢機卿会議で生前退位を発表した。

ちなみに、預言者、聖マラキは「全ての教皇に関する大司教聖マラキの預言」の中で1143年に即位したローマ教皇ケレスティヌス2世以降の112人(扱いによっては111人)のローマ教皇を預言している。

マラキは1094年、現北アイルランド生まれのカトリック教会聖職者。1148年11月2日死去した後列聖され、聖マラキと呼ばれている。彼は預言能力があった。マラキが預言した最後の教皇(111番目)がベネディクト16世だった。同預言書には後継者フランシスコ教皇については全く言及されていない。カトリック教会の歴史はベネディクト16世で終わっているのだ。

「私たちの教会には何かが壊れている」。これは、イエズス会のアンスガー・ヴィーデンハウス氏が南ドイツ新聞とのインタビューで述べた言葉だ。ベネディクト16世は最後まで生前退位の本当の理由を明らかにせず、「壊れた教会」を残して亡くなった。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年1月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。