無人機が戦闘で大きな役割を担うことで、戦闘はこれまで以上にコンピューターのウォー・ゲームのようになっていく。ボタン一つで相手側のターゲットを破壊できる。攻撃する側は戦場を目撃しないこともあって、戦場で戦死する兵士の数は減少する一方、無人機による民間人などを含む犠牲者は増加することが予想される。

日本は米国から地対空ミサイルシステム「パトリオット」を購入しているが、北から核弾頭ミサイルだけではなく、化学兵器などを搭載した無人機が大量に襲撃した場合のシナリオを検討しなければならない。北朝鮮からの無人機攻撃という新たな脅威が生まれてきたのだ。韓国領域内に侵入した北の無人機はその夜明けを告げるものだ。

ちなみに、北側が5機の無人機を韓国領域内に侵攻させたのは、韓国側の領空防備体制を調べるという意味合いもあるが、それ以上に性能を向上させた北製無人機をロシアや関心を有する国にオファーするための一種のプレゼンテーションだったのではないか。敵国の領域内に入り、ターゲットを破壊できる高性能の無人機を大量生産する狙いがあるのではないか。

無人機の場合、攻撃ミサイルとは違い撃墜はしやすいかもしれないが、生物化学兵器搭載の可能性がある無人機を容易には撃墜できないから、無人機防御システムは別の意味で難しいわけだ。今回の韓国側の対応をみれば、そのことが理解できる。

無人機は本来、人が入り込めない地域や空間を観察し、撮影し、運送できる目的で開発されたが、全てはデュアル・ユースだ。人類のために貢献する一方、人類を破壊する目的のためにも利用できる。どちらを選択するかは人間の判断にかかっている。無人機の場合も同じだろう。いつものことだが、問題解決のカギは外ではなく、私たち一人ひとりの中にあるわけだ。

2022年は過ぎ、明日から新しい2023年が始まる。「人は如何にしたら良くなるか」という大きなテーマを新年は読者の皆さんと共に考えていきたい。この一年、お付き合い下さりありがとうございました。どうぞ良き新年を迎えられますように。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2022年12月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。