岸田文雄首相が宏池会の真っただ中で育った人であったため、岸田氏の防衛三文書改訂への熱意を疑っていた。しかし決定に至るまでの軌跡をたどると真剣さが見て取れる。

朝日新聞の佐藤武嗣編集委員は12月17日付の論説で、防衛省幹部が「相手のミサイル発射前でも攻撃着手を確認すれば、相手領土を攻撃できる」としていることに触れて、「着手の見極めは困難で、先制攻撃と見なされれば国際法違反となる」と述べている。

しかし最初の1発を認識して同時に反撃する弾が現実に出現しているのである。向こうの弾が着弾するまでこちらからは撃てない、などという理屈は成り立たない。

(令和4年12月28日付静岡新聞『論壇』より転載)

屋山 太郎(ややま たろう) 1932(昭和7)年、福岡県生まれ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、解説委員兼編集委員などを歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。著書に『安倍外交で日本は強くなる』など多数。

編集部より:この記事は一般社団法人 日本戦略研究フォーラム 2022年12月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は 日本戦略研究フォーラム公式サイトをご覧ください。