在庫レスで受注販売! アパレルはまだ手付かずの改善余地が山ほどある

グローバル化、消費者の行動パターンの変化など、現状の延長線上ではない新しいビジネスモデルをまったく違うやりかたで作るしかない。
この産業は、バブル世代の古き良き世代の経営者とともに一度消えてなくなる方が良い。それほど、動かない産業だ。
コロナによってデジタル化が進み、SDGsの推進で環境素材にシフトしてゆくなど、これまでとは作り方も売り方も全く変わってくる。従来の頭の持ち主では舵をきることはできない。

 さらに、消費はインフルエンサーとよばれる個人が力を持ち始めると同時に、良いものを長く使う、二次流通の盛り上がりなど、ビジネスモデルも大きく変わる。
こうした明確なビジョンを、「DX」という言葉に踊らされる前に持つべきだ。バリューチェーンはいまだに手書き伝票とFAXで、この数十年何もかわっていない。

デジタル化という点では、素材をデータ化をすることで、スワッチサンプルをなくすべきだ。モデリングしたデジタル商品でささげ写真を作成し、在庫レスの受注販売をするのも一案だ。
3Dモデルによって、物流の効率化、CO2、水・エネルギー、紙消費の削減も可能になる。

つまり手付かずのアパレル産業にはやれることが山のようにあるのだ。

アパレル企業は「無駄なサンプルをつくっていない」というが、ベンダーが計測したところ、アパレル企業は量産品一枚に対し4枚もの無駄なサンプルを作っている。
しかし、顧客であるアパレルにそのことを指摘できないのが現状。それゆえ無駄な残反、衣料が膨大に発生し、中国でシーインなどのプレーヤーが現れるのは必然となっている。

 なにはともあれ、経営者のデジタルリテラシーを高める必要がある。あやまった経営判断、あやまったデジタル戦略が多すぎる。
また、個別企業の利益を優先するため、ビジネスプロトコル(業務フローコードなど)が統一されていない。そのため、商社の付帯業務は増える一方だ。
本来全体最適すべきクラウド型DXが、皮肉にも「個別最適」を加速させている。

 アパレルの利益率の低さも問題だ。ユニクロやグローバルSPAに足を引っ張られ価格が低くなっている。企画–販売を一気痛感するため国主導で、ビジネスプロトコルの統一化できないのか?

もはや、個別の企業がどうにかできる状態を超えており、海外に売るための越境EC支援、 無意味なバラマキ補助金でなく、アジアへの進出に対して税制優遇を行うなど戦略的目的を理解して各種の政策を打ってもらいたい。
日本のブランド力もアジアでは薄れてきているが、日本の国際ブランド化の最後のチャンスとしてのブランディングを高めるべきだろう。

総評

プロフィール

河合 拓(経営コンサルタント)

過去のヒットからAIが予測し売れる服を自動生成!?アパレル業界の課題とこれからとは
(画像=『DCSオンライン』より引用)

ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、政府への産業政策提言などアジアと日本で幅広く活躍。Arthur D Little, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナーなど、世界企業のマネジメントを歴任。2020年に独立。 現在は、プライベート・エクイティファンド The Longreach groupのマネジメント・アドバイザ、IFIビジネススクールの講師を務める。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
筆者へのコンタクト

提供元・DCSオンライン

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