ローソンの懐事情はいかに

上場で成城石井株を放出することになるローソン側の懐事情はどうだろうか。

まず収益面だが、ローソンの業績は確実に上向いている。けん引役は、国内コンビニエンス事業だ。2022年上期累計の既存店売上高前年同期比は102.4%と、当初計画を上回った。

全店平均日販も、前年同期の49万7000円から51万8000円に伸びている。売上増に伴い、2023年2月期通期の営業利益も目標の530億円(対前期比12.5%増)を達成できそうだ。

好調な収益に伴うキャッシュフローもあって、財務状況も改善している。ローソン銀行開業に伴うATM資金調達によって一時期は4300億円にまで膨張した有利子負債も、2022年2月期には約2200億円まで減少。一方でキャッシュ(現金および預金)は有利子負債を超える約3880億円に達し、キャッシュリッチの状況だ。つまり、急いで成城石井株を放出しなければいけないほどローソンは困ってはないというわけだ。

上場以外の選択肢もあり?

もちろん長期的視点で考えれば、投資資金は調達しておきたい。とくに海外事業に関しては、北米事業が収益柱に育ったセブン&アイ・ホールディングス(東京都)に大きく水をあけられている。事業ポートフォリオの面でも、ローソン本体とのシナジーが乏しい成城石井をいつまでも傘下に置いておくメリットはあまりない。

ローソンとしては、上場以外に外部からの資本参加受入や事業譲渡といった選択肢も考えられ、実際に引き合いもあるようだ。

ローソンの筆頭株主で、竹増社長の出身母体でもある三菱商事の意向も気になるところだ。グループ戦略の中で、成城石井は今後どのような役割を果たすのかを注視したい。

提供元・DCSオンライン

【関連記事】
「デジタル化と小売業の未来」#17 小売とメーカーの境目がなくなる?10年後の小売業界未来予測
ユニクロがデジタル人材に最大年収10億円を払う理由と時代遅れのKPIが余剰在庫を量産する事実
1000店、2000億円達成!空白の都心マーケットでまいばすけっとが成功した理由とは
全85アカウントでスタッフが顧客と「1対1」でつながる 三越伊勢丹のSNS活用戦略とは
キーワードは“背徳感” ベーカリー部門でもヒットの予感「ルーサーバーガー」と「マヌルパン」