自動車のハイドロプレーニング現象。教習所で習うので、おぼろげながら覚えているという方は多いかもしれません。この現象は、タイミングが悪ければ、どこでもどんな車でも起こりうることですし、遭遇すると大変な重大事故につながることもあるのです。

ハイドロプレーニング現象とは?
雨 走行

ハイドロプレーニング(アクアプレーニング)現象は、水のたまった道路を走行しているとき、タイヤと路面との間に水の膜ができ、タイヤが路面をつかむことができず、水の上を滑走する状態になることです。

タイヤが路面をグリップできてないわけですから、ステアリングやブレーキが効きません。つまり、ドライバーはクルマをコントロールすることができなくなるわけです。

路面にホコリや泥などが浮き上がって滑りやすくなる雨の降り始めや、高速道路など高速で走る道路はとくに注意が必要です。

どんな時、どんな場所で起こりやすい?
高速道路 トンネル

タイヤに溝が無ければ、タイヤと路面の間には簡単に水が入り込みハイドロプレーニング現象を引き起こします。そのため公道で使用するタイヤには、すべて溝が刻まれています。

ただし、クルマの速度が上がりすぎて溝による排水の臨界点を超えてしまっても、ハイドロプレーニング現象は起こるのです。そうなると車は水の上に乗った状態になり、ハンドルもブレーキも効かなくなります。特に起こりやすい場所をあげておきましょう。

・トンネル出口
トンネル内の路面はドライで、出口で路面に水が張っているという、急激に路面状況が変わるような箇所。そういった場所では、よりいっそう速度に気を付けましょう。

・雨がやんだとき
雨がやんでも、路面の水たまりはすぐには無くなりません。部分的な水たまりでもハイドロプレーニングは起こります。

・路面のわだち
一般道、高速道路に限らず、路面にわだちがあるところは、いわば細長い水たまりです。交通量が激しい道路、あるいは冬にチェーンが必要な降雪地帯などでは、特に注意したいポイントです。

ハイドロプレーニング現象に遭遇したら?
ペダル AT

ハイドロプレーニング現象が起きてしまったら、ドライバーはどうしたら良いのでしょうか?

ハンドル、ブレーキ、アクセルさえも効かない状態ですから、パニックになるドライバーもいますが、できるだけ落ち着いて周囲の状況を確認しながら、ゆっくりと減速しましょう。その際はアクセルから足を放さずに徐々に緩めます。ハンドル、ブレーキは操作しない、シフトダウンもスリップの原因になるので禁物です。

車速が落ちてくるとタイヤがグリップを取り戻しますので、それまでは急な操作をしないことを心がけてください。こうして文字で書くのは簡単ですが、実際の現場では慣れたドライバーでも難しいもの。

ハイドロプレーニング現象は、起きないよう気を付けることが重要です。

タイヤの溝

新しいタイヤの溝の深さは、8〜9mmです。1.6mmになるとスリップサインが表れ、使い続けると道交法違反になります。しかし安全性を考えると、溝の深さは半分程度でタイヤを交換しておけば安心です。

JAFが行ったテストによると、新品タイヤと使用した(5分山と2分山)タイヤの制動距離(100km/hからの急制動)を比べた結果、乾いた路面ではほぼ同じ。ウェット路面では、5分山でこそ同等に収まっていましたが、2分山タイヤで1.7倍も制動距離が伸びました。

ちなみに、同時にテストした5分山のスタッドレスタイヤ(同4.5mm)では、ウット路面で1.4倍の制動距離になったそうです。

これは溝が浅くなったことによる排水性の低下が原因。この排水性の低下は、ハイドロプレーニング現象を引き起こします。タイヤは5分山を過ぎたら、そろそろ交換時期と覚えておきましょう。

タイヤの種類

ハイドロプレーニング現象を起こさないためには、“ウェットに強い”とされるタイヤを選択するのもオススメです。

タイヤの溝は、デザイン(パターン)もさまざま。内側と外側で溝のデザインを変えたり、V字型に溝を切って排水性を良くしたり、センターに太いグルーブを設けたり、メーカー、ブランドによってデザインが変わっています。

このようなタイヤを選ぶことも、雨天時の安全走行には大きな効果を発揮します。ただし、トレッド面のデザイン(ブロックパターン)がロードノイズの原因となることもあるので、メーカーとしてそのあたりの設計にも配慮しています。

いずれにしても一番大事なのは、雨天時にスピードを出さないこと。これに尽きますね。