太陽光は、再生可能エネルギーの1つとして、現在特に注目されています。
しかしソーラーパネルの特性ゆえ、設置場所には制限があります。
では、もっとさまざまな場所で太陽光発電する方法はあるのでしょうか?
アメリカ・マサチューセッツ工科大学(MIT)電気工学・コンピュータ科学部に所属するマユラン・サラバナパバナンサム氏ら研究チームは、紙のように薄い太陽電池を開発しました。
従来のソーラーパネルの100分の1の重量であり、しかも柔らかいので、ボートの帆やドローンの翼などに取り付けられます。
研究の詳細は、2022年12月9日付の科学誌『Small Methods』に掲載されました。
従来のソーラーパネルは設置場所が限られる
太陽電池の基本単位は、「太陽電池セル」と呼ばれる小さなチップです。
この太陽電池セルをたくさん並べて、1枚の大きなパネルにしたものが「ソーラーパネル」と呼ばれます。

しかし従来のシリコン素材の太陽電池は、シリコンの厚さが原因で曲面には設置できません。
また、脆いセルをただ並べただけでは、雨風にさらされる野外には不向きです。
そのため従来のソーラーパネルでは、太陽電池を強化ガラスで覆い、重くて厚いアルミフレームと接着剤でしっかり梱包しています。
こうして私たちがイメージする「頑丈で重いソーラーパネル」が完成するのです。
これらの構造特性ゆえ、ソーラーパネルは屋根や平地など、平らで広いスペースにしか設置できないでしょう。
そこでサラバナパバナンサム氏ら研究チームは、どこにでも設置できる薄くて柔らかい太陽電池を開発することにしました。
紙のように薄い太陽電池が開発される

新しく開発された太陽電池は従来のソーラーパネルとは大きく異なっており、紙のように薄く柔らかいという特徴をもちます。
この太陽電池は、ナノ材料で構成された電子インクを印刷することで作られます。
プラスチック基板の上にナノ材料を層状に堆積させていくことで、厚さ約15μmの極薄太陽電池を作り上げるのです。

そしてこの太陽電池をプラスチック基板から剥がし、「ダイニーマ」と呼ばれる超高分子量ポリエチレンの繊維に接着剤で貼り付けます。
ダイニーマは、1m2あたりわずか13gという軽量素材であり、柔軟なだけでなく非常に高い強度をもちます。
その強度ゆえ、沈没したクルーズ船「コスタ・コンコルディア」を海底から引き上げるためのロープにもダイニーマが使用されたのだとか。

極薄の太陽電池をダイニーマに接着することで、軽く、薄く、柔らかく、そして頑丈な、新しいタイプの太陽電池が生まれました。
ちなみに研究チームによると、「ダイニーマに直接太陽電池を印刷することは、処理工程で生じる化学的・熱的な問題ゆえ難しい」とのこと。