ESG推進者が理解していないこと
WEFや国連は、ESG(環境・社会・ガバナンス)の導入に邁進している。ESGを推進しようとする銀行や投資家たちが十分理解していないのは、化石燃料、とりわけ石炭や原油の主な用途は発電ではなく、経済や生活の存続と繁栄に必要なあらゆるものの原料となる誘導体や燃料の製造であるという現実である。
エネルギーだけを取ってみても、ここ数年、欧州をはじめとしてエネルギー危機が起きており、一旦、石炭火力を止めていた欧州各国も、そうしたプラントを再開して急場を凌いでいる。また、天然ガスをロシア以外の国から調達するために、新興国の経済に必要なエネルギー源まで奪おうとしており、なりふり構わぬ姿勢を世界に晒している。それでも頑なに、「これは緊急事態なので脱炭素の動きは継続させる」と主張する厚かましさだ。
間欠的で連続性のない風力や太陽光に依存している限り、「エネルギーは風の吹くまま、お天道様のご機嫌次第」、今回のようなエネルギー危機が、必ずや再来するであろう。
さらに、太陽光や風力は、電気を間欠的に発電するだけであり、石炭や原油を原料とする製品を作ることはできない。それでいて、ソーラーパネルや風力発電機の部品の大半は原油から作られる石油派生品で作られているため、自然エネルギーは原油なしでは成り立たないのである。
欧州のエネルギーの現実から、政治家、政策立案者、投資家、メディアなどは、脱炭素化が意味する影響の大きさを理解しなければならない。
無知が及ぼす影響石炭や原油の利用や産業からの撤退が望ましいという無知が蔓延すると、取り返しのつかない損害を与えるだけでなく、それらを原料として作られる多くの製品の供給不足と価格高騰を消費者に与えることになる。
この運動を推進する銀行や投資家は、化石燃料から撤退することが温室効果ガス排出を削減できるとして、ウォール街ではESGを歓迎している。バイデン大統領と国連の両方が経済とエネルギー・インフラを再構築するための手段として、ESGについて投資界との共謀を支持しているとのこと。
化石燃料すべてから撤退するなら、その前に今日の社会と経済を維持するために、それに代わるものを探しておく必要があるのは論を待たない。
ESGこそ止めるべきときESGの進展に伴い、銀行や投資家が、現代社会にとって不可欠な石炭や石油製品の特性を知らないことが露呈された。石炭や原油の使用を止めようとする努力は気候変動ではなく、当たり前に享受している製品と生活水準を奪う、あるいは遅らせることにもなるため、文明に対する最大の脅威である。
彼らは、自分たちの目的のために「進歩的な」経済やライフスタイルを再構築しようとしているが、これは極めて危険なものであり。一般の消費者は、このようなことを頼んだ覚えもなければ、それを許したこともない。従って、有用な化石燃料の利用を止めてしまうことは不道徳、無責任なことである。
ESGは大銀行と大手投資会社の癒着を進めるものでもあり、発展途上国の人々に、大きな欠乏とインフレとを与え、継続的で絶望的な貧困に晒すことにもなる。今こそ化石燃料の利用を禁じるのではなく、ESGを禁止する時が来ている。