クリスマスの食卓と言えばチキンやターキー、そしてケーキがイメージされますが、ヨーロッパにはクリスマスにちょっと意外な「魚」を食べる地域があります。
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クリスマスに鯉を食べる
冬の一大イベントであるクリスマス。12月も後半になると、わが国のスーパーには「クリスマス用の丸鶏」が並び始めます。
わが国でクリスマスにチキンを食べるのはとても一般的ですが、これはアメリカの「クリスマスにターキー(七面鳥)を食べる」という文化が由来となったものです。日本ではターキーが一般的な食材ではなかったため、よりなじみ深いチキン(鶏)に置き換わったのです。
さて一方、海外にはクリスマスの食事と言えばターキーやチキンのような鶏肉よりも「魚」のほうがポピュラーという地域もあります。有名なのはチェコやポーランド、ルーマニアなどの東欧諸国。ドナウ川という大河に臨するこれらの国では、クリスマスには「鯉」を食べる文化がいまでも残っています。
イタリアのクリスマスはウナギ
さて、同じヨーロッパでも大きく南西に離れたイタリアでも、クリスマスに「魚」を食べる文化があります。しかしそれは鯉ではなく「ウナギ」です。
イタリアの河川には、日本の河川と同様にウナギの仲間が生息しています。そのほとんどはヨーロッパウナギといい、日本にいるニホンウナギとは別の種ですが、同様に利用することができます。そもそもイタリアではウナギは盛んに養殖されており、食材としてはポピュラーです。
イタリアではクリスマスになると、このヨーロッパウナギをマリネにしたり、ディルなどのスパイスとともにゼリーにしたうえでビネガーをかけて食べるのだそうです。ニホンウナギと同様にヨーロッパウナギも脂が多くこってりとした味わいがあるのですが、酢を使った料理にすることで脂っぽさが抑えられ、さっぱりとして美味なのだそう。
なぜウナギを食べるの?
しかし、そもそもヨーロッパでウナギを、しかもクリスマスに……と聞くとちょっと意外な気もします。いったいなぜイタリアではクリスマスにウナギを食べるのでしょうか。
カトリック国であるイタリアでは、クリスマスはイエスキリストの生誕を祝う厳かな儀式であり、アメリカや他の地域ほどには「祭り」感は強くありません。そのためかつては贅沢の象徴である肉食は避けるべきであるという考えがあり、魚を食べるという文化がありました。ヨーロッパウナギは冬に脂がよく乗るため、クリスマスシーズンに美味しい魚として食卓に上るようになったとみられています。
また、キリスト教においては、人に原罪をもたらすきっかけとなった悪い生き物として「蛇」が縁起の悪い生き物となっています。そして皆さんもご存じの通り、蛇とウナギは見た目がちょっと似ています。
そのため「ウナギを積極的に食べることで、悪い生き物である蛇を遠ざける」といった縁起を担ぐような意味合いもあったといわれています。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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