驚いたのは、多くの国が小選挙区制で選挙を行う結果、各種政党が誕生し、政権交代が起こることである。最近の日本では逆に、政権交代が起こらないから「選挙制度を変えよ」という議論が出る。しかし政権交代が起こらないのは、公明党のような宗教政党が与党に食い込み、共産党のような独裁主義的な体制の政党が存在し続けているからだ。
政治資金が何にいくら使われてきたのか、当時、信頼できる資料はなかった。選挙制度の変更に当たって最大の改革は、必要な政治資金は「国が賄う」という仕組みを導入したことである。その金額は国民一人当たり250円に相当し、22年の年間総額は約315億円である。それでも若干足りないので、自らも集めていいことになっているが、昔のようにどこにでも手を突っ込んで良い訳ではない。
選挙制度の変更の際には、禁止事項を山ほど作った。それまで公共事業といえば談合があり、その際、政治が紛れ込んだものである。このため談合を全て禁ずる新手を盛り込んで独禁法まで改正した。
政治に大分お金が掛からなくなった筈なのに、政治とカネの問題は相変わらず続いている。今度は薗浦健太郎議員がパーティー収入の過少申告で辞任だという。どうしたものか。
(令和4年12月21日付静岡新聞『論壇』より転載)
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屋山 太郎(ややま たろう) 1932(昭和7)年、福岡県生まれ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、解説委員兼編集委員などを歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。著書に『安倍外交で日本は強くなる』など多数。
編集部より:この記事は一般社団法人 日本戦略研究フォーラム 2022年12月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は 日本戦略研究フォーラム公式サイトをご覧ください。