近年、SPOTを代表とする四足歩行ロボットは目覚ましい進歩を遂げており、主に人々を助ける目的で開発されてきました。
しかし多くの人が危惧していたとおり、こうした最新技術の軍事転用が次々と始まっています。
そして最近、アメリカのフィラデルフィアを拠点とするロボット開発企業「Ghost Robotics」がライフルを搭載した無人4足歩行ロボットを発表しました。
ライフルを装備した四足歩行ロボット
発表されたのは、Ghost Robotics社が開発してきた四足歩行ロボット「Vision」の最新バージョンです。
そしてこのロボットには、武器メーカー「SWORD International」によって提供された専用ライフル「Special Purpose Unmanned Rifle(SPUR)」が搭載されています。
このSPURは射程距離1.2kmの強力な6.5mm狙撃ライフルです。
しかも光学30倍ズームと赤外線カメラが備わっているため、昼夜問わずターゲットを捕捉できるでしょう。
発射からリロードまですべてリモート操作できるため、完全な無人兵器になりえます。
ちなみに搭載できる弾薬の量など武器の詳細は明らかにされていません。
さて、こうした四足歩行ロボットのメリットは明らかです。
機動性が高いだけでなく、車輪では不可能な複雑な地形でも簡単に横断できます。
これはつまり、「操縦者が危険を冒さず、ロボットを使ってどんな場所にでもすばやく潜入できる」ということです。
SPOTは救援用でしたが、SPURを搭載したVisionは軍事にこのメリットを活用する、ということでしょう。
当然ながら、SNS上では様々な議論が生じています。
自律型殺戮兵器の到来か
公開されたVisionとSPURの写真は、多くの人に「自律型殺戮兵器」を連想させたようです。
映画や小説では、銃を搭載した自律型ロボットが幾度も登場してきました。
そして今回、そんな殺戮兵器がフィクションから現実に抜け出してきたようなインパクトを私たちに与えたのです。

そのためSNS上では、「将来、Visionが自律型殺戮兵器として街中を駆け回るのではないか」と危惧する声が上がっています。
しかしGhost Robotics社のCEOであるジレン・パリク氏は、「SPURは自律兵器システムではない」と、はっきりと回答しました。
彼によると、「VisionやSPURはリモート操作によって完全に制御される」というのです。

しかし、オーストラリアのクイーンズランド大学(The University of Queensland)法学部によると、「国際法では、無差別に攻撃しないよう対策されている限り、自律兵器システムは禁止されていない」とのこと。
そして自律型ドローンによる攻撃システムはすでに開発されており、一部の地域では使用されているかもしれない、と言われています。
今後、四足歩行ロボットがどのような道をたどるのかは分かりません。
しかし今回の発表は、自律型兵器の新しい時代がすでに始まったことを示しています。
参考文献
US military may get a dog-like robot armed with a sniper rifle
Robot dogs don’t look as cute with night-vision sniper rifles on board
提供元・ナゾロジー
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