宇宙船、空飛ぶクルマ、ドローン、3Dフードプリンタなど、SF作品で描かれた未来の技術は次々と現実のものとなっています。
であるならば、現在のSFが遠い将来に実現するかもしれません。
アメリカ・ロンチェスター大学(University of Rochester)機械工学科に所属するピーター・ミクラブシック氏ら研究チームは、SF的な魅力に溢れたスペースコロニーに関する論文を発表しました。
小惑星をくり抜き回転させ、その中に人類を住まわせるというのです。
SF映画に出てきそうなこの突飛なアイデアは果たして実現可能なのでしょうか。発表内容を見てみましょう。
研究の詳細は 2022年1月3日付の学術誌『Frontiers in Astronomy and Space Sciences』で発表されており、その内容は2022年12月8日付のプレスリリースにまとめられました。
スペースコロニーの土台として小惑星を利用する
科学者たちは地球以外に人類の住処を見出せるか検討してきました。
その候補として、月や火星などがよく挙げられます。
そして他天体と並んでよく話題にあがるのが、スペースコロニーです。
しかし、他天体に住む場合と異なり、スペースコロニーを宇宙に建設する場合、その建築資材をどの様に確保するかは大きな問題です。
今回ミクラブシック氏ら研究チームは、小惑星を利用することを提案しました。

小惑星とは太陽の周りを回る岩石質の天体であり、約46億年前に太陽系が形成されたときに残されたものです。
科学者たちはこれまでに60万個以上の小惑星を発見しており、その大きさも数m~数百kmと様々です。
そして研究チームは、その中でも直径300mの小惑星に着目し、これをスペースコロニーへと改造する大胆な方法を提案しました。
小惑星の中央をくり抜き回転させ、その中に人間を住まわせるというのです。
突飛なアイデアに思えますが、実はこれ、1976年にアメリカの物理学者ジェラード・オニール氏が提案したスペースコロニー「オニール・シリンダー」に触発されたものとなっています。

オニール・シリンダーは、2つの巨大なシリンダーで構成されており、回転することで遠心力を利用して内部の居住区に人工重力を与えるというもの。
日本人にとってはガンダムに登場するスペースコロニーと表現した方がわかりやすかもしれません。
しかし、それら巨大シリンダーの材料すべてを地球から宇宙へと運んでくるのは現実的ではありません。
そこでミクラブシック氏らは、「既に宇宙空間に存在している小惑星を土台として使ってしまおう」と考えました。