インターネットで住宅ローンの情報を検索すると、ネット銀行を中心に超低金利のローンが目にとまる。中には0.5%台や0.4%台という超低金利もある。ただ、よく調べていくとひとつの金融機関内でも金利の高いローンと低いローンがあることが分かる。この違いは、手数料負担の違いによるところが大きい。実は、この手数料負担までをトータルして考えると、金利の低いローンが必ずしも特であるとはいえなくなってくるので注意が必要だ。
同じ住宅ローンでも金利が0.12%も違う
まずは、完済までの金利が確定している全期間固定金利型のフラット35を例にとって比較してみよう。
フラット35を取り扱っている某メガバンクの2018年1月の金利をみると、同じ返済期間35年でも、金利が1.33%のローンと1.45%のローンがある。同じ銀行なのに、なぜそんな違いがあるのか。これは、最初に負担する事務手数料が異なっているからだ。具体的には1.33%のローンの手数料は借入額の1.026%と「低率制」で、1.45%のローンは借入額にかかわらず一律3万2400円の「定額制」になっている。
つまり利用者が考えなくてはならないのは、最初の事務手数料負担が若干高くなっても金利が低い「定率制」がよいのか、金利が少し高めでも手数料が安い「定額制」がいいのかという点となる。
金融機関からすれば、「定率制」は最初に一定額の手数料を受け取れることで金利を下げ、「定額制」は手数料を少なくする代わりに金利を上げて採算を合わせているといえる。どちらがいいのか、その選択の参考として、完済までの総支払額を、借入額3000万円、35年元利均等・ボーナス返済なしで試算すると次のようになる。
借入額3000万円で「定率制」が約46万円負担軽減
まず金利の低い「定率制」で考えてみよう。借入額3000万円の35年ローン(元利均等・ボーナス返済なし)なので、35年間の総返済額は3753万8340円となる。ちなみに毎月の返済額は8万9377円。それに当初の事務手数料が借入額3000万円の1.026%の30万7800円かかるので、総返済額と合わせた35年間の総支払額は3784万6140円となる。
これに対して「定額制」は最初の事務手数料負担が3万2400円ですむが、金利が若干高くなるので、毎月の返済額は9万1122円に増える。35年間の総返済額は3827万1240円で、事務手数料と合わせた総支払額は3830万3640円だ。
「定率制」と「定額制」を比較すると、金利が低い分だけ「定率制」のほうが総支払額は45万7500円少なくなる。
手元に現金を残して運用できる安心感がある
ただ、マイホーム取得時は何かと物入りであるため、最初の支出はできるだけ抑えたいという事情もあるだろう。「定率制」の手数料から「定額制」の手数料を引くと27万5400円の差がある。それだけ手元に残しておければ、何かと安心感があるだろうし、何かあったときには生活費の足しにできる。返済負担が厳しい場合には、そこから補充しながらしのぐことができるかもしれない。
また、この27万5400円をうまく運用すれば、総支払額の差額46万1240円をカバーできる可能性もある。現在は超低金利だから預貯金では35年間運用してもさほど増えないが、仮に1%の利回りが35年間運用できれば36万7456円に増え、3%では67万9787円、利回りが向上して5%になれば129万5944円に増える。そう考えると、「定率制」の金利の低さだけに目を奪われるのではなく、手元に現金を残しておける「定額制」の安心感にも捨てがたいものがある。
住宅ローンの利用に当たっては、このような点も考えながら事務手数料の仕組みや事務手数料の違いも理解した上で、自分たちにはどちらがいいのかを判断しながら住宅ローンを利用するようにしたいところだ。
文・山下和之(住宅ジャーナリスト)
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