年末になると魚屋の店頭をにぎわせる新巻鮭。ちょっと手を出しにくい価格のことも多いですが、普通の塩鮭とどう異なるのでしょうか?
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
新巻鮭の仕込みがスタート
三陸海岸の中部に位置し、サケ漁が盛んな岩手県大槌町。ここで先月末より、特産の新巻鮭の製造が佳境を迎えています。大槌町内の漁港作業所では、塩漬けが終わったサケを天日干しにしていく作業が進められています。
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大槌町は新巻鮭発祥の地とされており、高品質な新巻鮭の産地としても知られています。しかしここ数年は岩手県全体でサケの極端な不漁が続いており、去年からは秋田県で水揚げされたサケを仕入れて製造しているそうです。
輸送費や電気代の高騰に苦しみながらも、伝統の味を守りたいという思いで作っていると業者は語っています。完成した新巻鮭は、年末の贈答品用に出荷作業が進められていくそうです。
新巻鮭ってどんなもの?
新巻鮭とは、塩漬けにしたサケを天日干しにしたもの。大きなサケを1匹丸ごと使用して作るのが特徴で、内臓をとったサケをまず塩漬けにし、水につけて塩抜きをしてから、天日と寒風にさらして水分を抜いていきます。
新巻鮭という名称については、もともとはサケの乾燥品を藁で巻いて保存する文化があり、その名称である「藁巻鮭」が転訛して新巻鮭になったという説が一般的です。またそのほか、出来上がったものを荒縄で粗く巻いて保存していたので「荒巻鮭」と呼んだ、という説もあるようです。
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食べるときは1切ずつ切り出し、焼いたり鍋の具材にします。我々が普段食べなれた塩鮭と比べるとややしょっぱく感じるものの、旨味が強く、東日本の各地で冬の食材として珍重されてきました。
塩鮭とは違うの?
そんな新巻鮭ですが、本格的なものは1本あたり数千~1万円以上するのが普通の高級食材です。安価な総菜というイメージの塩鮭と比べると高く、知らない人からすればどうしても手が出しづらいものです。
そもそも「新巻鮭って塩鮭と何が違うの?」と疑問に思う人も多いかもしれません。一言で言いきれるものでもないのですが、多くの場合その最大の違いは「熟成の有無」になります。
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安価な塩鮭はシンプルに言えば「塩で水分を抜いただけ」のもの。一方、新巻鮭は上記の通り、塩抜き後に乾燥を行う工程が入ります。これによって水分がさらに抜けるだけでなく、乾燥に時間をかけている間に酵素の力で熟成が進み、たんぱく質がうまみ成分であるアミノ酸へと変化するのです。
新巻鮭のほか、北海道で作られる山漬けなど、昔ながらの塩鮭は塩気が強いものが多いですが、これはそれだけ長期間熟成をしているということでもあります。その分旨味も深く、これらのサケを食べると市販の塩鮭では物足りなくなってしまうのです。
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<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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