12月11日、月面探査を計画するスタートアップispaceの月面着陸船(ランダー)がSpaceXのFalcon9により打ち上げられました。


今回はispaceの民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」のミッション1にあたり、月面ランダーにはJAXAとタカラトミーが共同で開発したローバーやUAE宇宙機関のローバーなど、7つのペイロードが搭載されています。
さらに、着陸時に舞い上がる月面の砂・レゴリスをランダーで採取し、所有権をNASAに販売します。成功すれば世界初の月資源の商業取引になる見込みです。
打ち上げ後に開催された記者会見では、CTOの氏家亮氏がランダーの姿勢と電力が安定し、通信の確立に成功したことを報告しました。
現在行われている運用は、打ち上げ準備から月面着陸まで10段階で設定されているマイルストーンのうち、3段階目の「Success3 安定した航行状態の確立」にあたります。今後は搭載されているペイロードに電源を入れ、不備がないことの確認等を行う計画で、早ければ今週中にSuccess3が達成される予定です。

ispaceのランダーの月面着陸は2023年4月末頃になることが見込まれていますが、2023年初頭にはアメリカの民間企業であるAstroboticの月面着陸ランダーの打ち上げも予定されています。民間初の月面着陸について代表取締役CEO&Founderの袴田武史氏は、記者会見でこのように語りました。

記者会見はオンラインで開催され、CEOの袴田氏らがアメリカ・フロリダから参加しました
「(ispaceのランダーが)確実に最初に月面着陸できるというところが決まっているわけではありませんが、我々としては最初に着陸できる機会があるのであれば、それを引き続き目指していきたいと思っております。
その一方で、一番になることが我々の究極のゴールではありません。我々としては月の産業を拓くためのリーダーシップを発揮していくというところだと思っていますので、必ずしも一番ではなくても最初のグループに入っていることが重要です。
この産業(月面産業)も一社だけで成り立つものではありませんので、複数社が競い合いながら、より良いサービス、そしてより大きな産業を作っていくというところを一緒にリードできればと思っています」
民間企業による月面開発の特徴を記者から質問されると、袴田氏は資金の確保の難しさとスタートアップならではのスピード感を挙げました。
「資金をしっかりと確保して組織を作り上げることが、非常に重要になります。スタートアップが大型の資金調達を続けるということもなかなか難しいのが実情としてありますので。我々としては今まで200億円以上を調達をさせていただきましたが、いろんな苦労もあってここまできております」
「その(調達した)資金をもとに、我々は開発を進めさせていただいていたわけですけども、我々としては民間の中で、スタートアップでやっていくという視点で、開発のスピードをなるべく早くすること、マーケットインをなるべく早くするということを中心に考えてきました」
また、一部のメディアではispaceが早ければ2022年度中に上場する可能性があることが報じられていました。今後の計画について袴田氏に尋ねると
「(今回の打ち上げ成功は)我々の今後の事業の進展に非常に大きな推進剤になると思っております。我々としては事業を継続していくために、資金調達というのは非常に重要だと思っており、様々な資金調達の可能性を想定しながら進めております」
と回答がありました。
月面開発を巡っては、アルテミス計画が起爆剤となり、探査や居住地の建設をはじめ、様々な事業構想が世界で計画されています。
ispaceが顧客のペイロードを搭載したランダーを打ち上げたことで、月面開発における重要なインフラである輸送サービスが本格的に動き出しました。今後は月面開発はさらに加速していくことが期待されます。
提供元・宙畑
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