NASAは、南北アメリカ大陸における温室効果ガスの濃度分布の可視化を目指して2018年に発足した地球科学ミッション「GeoCARB (Geostationary Carbon Observatory)」を中止することを発表しました。

GeoCarbは、大手通信衛星企業SESの子会社であるSES-Government Solutionsが開発した静止軌道衛星に、二酸化炭素、一酸化炭素、メタンなどの温室効果ガスを高精度に測定できるセンサを搭載し観測するミッションです。このセンサは、NASAジェット推進研究所が開発した地球観測衛星「OCO-2 (Orbiting Carbon Observatory-2)」の技術を基盤にしています。GeoCarbは打ち上げの遅延が発生しているほか、運用費が想定の3倍以上となっているため、より費用対効果の良い代替ミッションに引き継がれるとのことです。

NASA本部の科学担当副長官であるThomas Zurbuchen氏は、今回の発表について以下のコメントを発表しています。

Decisions like this are difficult, but NASA is dedicated to making careful choices with the resources provided by the people of the United States.We look forward to accomplishing our commitment to state-of-the-art climate observation in a more efficient and cost-effective way.
(訳:このような決断は難しいが、NASAはアメリカ国民から提供された資源を使って慎重に選択することに専念している。より効率的で費用対効果の高い方法で、最先端の気候観測へのコミットメントを達成することを期待しています。)

衛星を活用した温室効果ガスの測定は、近年注目度が増しており、様々なミッションも展開されています。JAXAが運用する「いぶき2号」は全球温室効果ガス濃度分布の解析を行っているほか、NASAが開発し2022年7月にISSに設置された「EMIT (地球表面鉱物塵源調査)」の機器は、メタンの大量排出源の特定に成功しています。

GeoCarbの意義を引き継ぐ次回ミッションに期待です。

提供元・宙畑

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