トランプ岩盤支持層を体現するグリーン議員
陰謀論への傾倒、敵と見なすものへの攻撃性を「トランプ2.0」の必要条件と定義づけるならば、デサンティス氏よりも、共和党下院のマジョーリ・テイラー・グリーン議員が本当の「トランプ2.0」なのかもしれない。
以前の拙稿で記したように、グリーン氏は当選直後から陰謀論者として目されており、それが一因で民主党から下院委員会に所属することを拒否された。2020年の大統領選が不正であったという主張も現時点で撤回していない。
また、バイデン大統領、民主党に対して極めて好戦的でもあるバイデン大統領が就任した直後に彼の弾劾を求める決議を提出しており、彼の政権が南部の国境管理よりウクライナ支援を優先していると批判し、米国のウクライナ支援を停止することも示唆している。
そして、本当の「トランプ2.0」である彼女に、熱狂的なトランプ支持者でもある共和党の岩盤支持層は熱烈に支持している。ニューヨーク・タイムズ紙の記事によれば、2021年の献金額において、グリーン氏は212名の共和党下院議員の中で4位につけた。また、彼女は当選して最初の三か月で、320万ドルもの政治献金を受け取り、ほとんどが少額の献金、つまり草の根支持者から送られたものだった。
今後の政局を握る存在にグリーン氏は一年前と今では置かれている状況が大きく変化した。約一年前、彼女は過去のSNS上の発言を批判され、上記でも述べたように委員会への所属を拒否され、議会内の仕事をほとんどせずにこれまで過ごしてきた。
だが、今では、下院議長になることが確実視されているケビン・マッカーシー議員から委員会に復帰することが約束されており、彼女が中心となりウクライナ支援の中身を精査することになるだろう。
ここまでトランプ氏と政治家としてのスタイルが近いグリーン氏が共和党内で力を持ち始め、重宝されているように見えるのは意外かもしれない。中間選挙でトランプ氏の存在がマイナス要因だったことを考慮すれば猶更だ。だが、岩盤支持層抜きでは選挙が戦えないと党内指導部が考える以上、共和党はトランプ氏の分身であるグリーン氏への配慮を欠かすことができないでいる。