便座に座ったままトイレの水を流したとき、かなりの水飛沫がお尻に当たるのを感じたことがあるでしょう。
これはトイレの水を流したときに、もし人やフタが乗っていなければトイレの水はかなり空中に飛散していることを意味しています。
あまり考えたくない問題ですが、アメリカ・コロラド大学ボルダー校(CU-Boulder)に所属するジョン・クリマルディ氏ら研究チームは、レーザーを用いてトイレの水を流したときにどれだけのエアロゾル粒子が空気中を舞うか可視化する実験を行いました。
映像を見たら、きっとあなたは「フタを閉じてから」トイレの水を流したくなるでしょう。
研究の詳細は、2022年12月8日付の科学誌『Scientific Reports』に掲載されました。
ロケット噴射のように舞い上がるトイレの汚水
「便器のフタを閉めないと、水を流した時に汚水が飛散する」
このことはかなり昔から知られている事実ですが、飛び散る粒子は目に見えないため、あまり気に留めている人はいません。
しかしコロナ禍を経て、多くの人は空気中を浮遊するエアロゾル粒子に注目し始めました。
このエアロゾル粒子とは、微小な液体や固体の粒子と周囲の気体の混合体のことです。
では、トレイ後の汚物と汚水のエアロゾル粒子は、水を流すことで空気中をどれほど舞うのでしょうか?

クリマルディ氏ら研究チームは、北アメリカの公衆トイレで一般的に使用されているタイプの便器を対象に、どれだけのエアロゾル粒子が舞うか実験。
レーザーを用いて、粒子の位置、移動速度、方向などを視覚化できるようにしたのです。
実験の結果、トイレの水を流すと、その粒子が便座のはるか上方まで噴出しているのが分かりました。

研究チームは、「エアロゾル粒子はただ浮遊するだけだと思っていましたが、実際はロケット噴射のようでした」と述べています。
この実験では、粒子が毎秒2mの速度で放出され、8秒以内に便器の上1.5mまで到達しました。
そして粒子の多くは天井にぶつかるまで舞い上がり、そこから部屋中に広がっていきました。

また人の鼻毛をかいくぐって肺に侵入できるほど小さい粒子は、数分以上空気中を浮遊したままの可能性があるとのこと。
実験では清潔な水が用いられましたが、これが実際の汚水であれば、粒子の中に大腸菌やノロウイルスなどが含まれている可能性があります。
ちなみに、新型コロナウイルスも人間の排せつ物内に存在しますが、「トイレのエアロゾル粒子を介して感染しやすくなる」という証拠は現在提出されていないようです。

これまで「トイレのフタっているの?」なんて考えていた人もいるかもしれませんが、今回の研究結果を踏まえると、フタをしてから水を流し、定期的にフタを掃除するのがベストなようです。
もちろん、便器の種類によって水の流れ方・粒子の動きは異なるでしょう。
それでも多くの人は個々の便器の「粒子の動き」まで把握できないので、安全策としてフタをして流すよう徹底した方がよさそうです。
参考文献
CU scientists shine a light on what comes up when you flush
元論文
Commercial toilets emit energetic and rapidly spreading aerosol plumes