深海生物と言えばその「奇妙な形状」を思い浮かべる人も多いと思います。彼らはいったいなぜこのような形をしているのでしょうか?
(アイキャッチ画像提供:茸本朗)
異形の深海新種が複数見つかる
今月、オーストラリアの研究チームが、インド洋で奇妙な姿形をした新種の深海生物を複数発見したと発表し、世界的な話題となりました。
彼らが調査を行ったのは、インドネシア・スマトラ島の南にある「ココス諸島」周辺の海域。ここで深海調査が行われたのは初めてのことです。
この海域には渓谷や尾根、古い海底火山などからなる複雑な地形があります。そしてそこには「途方もないモンスター」が生息していたと調査チームメンバーは語っているそうです。ただ現状、これらの生物について分かっていることは何もないとのことです。
奇妙な見た目の深海生物たち
太平洋に臨する我が国も周囲を深海に囲まれており、そこで数多くの深海魚が捕獲されています。そしてその多くが、我々が普段見慣れている魚たちとは大きく異なる外見を持っているのはよく知られるところです。
ひたすらに黒いものや、逆に目が焼けそうなほどに赤いもの、牙や目が異常に大きいもの、吻が大きく前方に突き出すもの、口が裂けすぎているものなど、その見た目は大変バラエティに富んでいます。地上ではホタルなど一部の生物でしか見られない「光を放つ」ものすら、深海ではごく当たり前の存在です。
彼らの奇妙な外見を見ていると「もしこの世に創造主がいるのであれば、深海生物を作った時にはちょっとお酒を飲みすぎていたのではないか……」と思ってしまいます。
その異形の意味とは
しかしなぜ、彼らは奇妙な形をしているのでしょうか。それは彼らが深海で生き抜くために進化したからです。
水深200mより深い深海は、海上から届く光の量も少なくなり、人の目にはどこまでも暗闇が広がっているようにしか見えません。そんな「餌も捕食者もお互いに見えにくい」という環境で、生物たちは様々な能力を発達させました。
光を吸収する黒い体色は深海に溶け込む一方、赤い光は海水に吸収されてしまうため、真っ赤な体色もまた深海では非常に見えにくいものとなります。
大きい牙や口は、周囲が見えにくい深海でひとたび見つけた餌を逃すことのないよう、一撃でとらえ飲み込めるように発達していったためです。
そして光はまさに光学迷彩。実は深海においても、上方からごくわずかな太陽光が届いており、それによって生き物たちの影が下方に投影されます。するとそれを目印に捕食者がやってきてしまうのです。そのため自らもわずかに光り、上方からの光とシンクロすることによって、自らの影が下に投影されないようにするのだそうです。
このように、深海生物たちの持つ「異形」は、厳しい深海環境の中で生き延びたいという思いが結実したものだといえるのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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