首都圏エリアでの遅れを挽回できるか

 そうして波に乗ったアルペンが打ち出したのが「Alpen TOKYO」構想だ。ただ、都心の大型店は出店コストがかさみ、リスクも高い。なぜアルペンは勝負に出たのか。

 スポーツ用品販売店業界は、ゼビオホールディングス(福島県:以下、ゼビオ)とアルペンの2強が3位以下を大きく引き離している。僅差でトップ争いにしのぎを削る両社だが、強みとするエリアはまったく異なる。

 首都圏とくに東京・神奈川では、ゼビオの店舗数がアルペンの3倍近くある。イメージ的にも、ゼビオがターミナル駅のビル内などでよく見かけるのに対し、アルペン系の店舗は郊外のロードサイドに店舗を構えているように感じる。

 見方を変えれば、首都圏エリアはまだまだ伸びしろがあるとも言えよう

 ただし、好立地の物件はそう出てこない。そこに舞い込んだのが「ヤマダ電機」の新宿撤退だ。アルペンにとってはまたとないチャンス到来というわけだ。

売上は堅調も利益面は……

 売上は堅調に推移するアルペンだが、利益の展望は決して明るくない。2022年6月期の営業利益は71億円と、前期(150億円)から半減。今のところ2023年6月期通期予想も横ばいを見込む。

 新規出店・既存店強化・光熱費増などによる販管費増の影響もあるものの、減益の最大の要因は、なんといっても粗利益率の悪化だ。2022年6月期通期の粗利益率は前期から2.6ポイントも低下している。

 円安や資材価格の高騰で、仕入負担は重みを増す一方だ。物価高と騒ぐ割に、日本の消費者物価(CPI)上昇率は欧米よりはるかに低い。ただ、ビジネスにおける仕入価格を反映する企業物価指数は10%近く上昇し、企業収益を圧迫している。ライバルとの価格競争も厳しく、価格への転嫁が難しい点も災いした。

 今のところ好調な売上も、「アウトドア特需」が鈍化傾向にある中で先行きは楽観できない。

 事業環境を踏まえたうえで、アルペンの戦略はどうあるべきか。巨大旗艦店によるシェア争いもよいが、それだけではレッドオーシャンから抜け出せない。プロダクトミックスによる粗利改善、また、新分野の開拓などブルーオーシャンに向けた取り組みも必要だ。アルペンは最近、キャンプ場を自ら経営するといった新たな試みも打ち出している。レッドオーシャンを抜け出し利益成長を実現できるかに注目だ。

提供元・DCSオンライン

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