ガンダム岩へのタラップ設置
話が前後するが、第一吊り橋上流にガンダム岩という巨大な二段に重なった大岩がある。
![伊藤新道復活プロジェクトの記録2022|父から受け継ぐ意思と景色](https://cdn.moneytimes.jp/600/900/BpiWPHCRMCpPguOKoBWquOmOfgLLhqPR/f605ff7f-feff-407c-adf3-6223dce9bae2.jpg)
この岩は一見高巻けばいいのか、下の洞窟のようになっている滝つぼ脇を潜ればいいのか分からない様相。水量がそこまで多くなければ優に下を潜れるのだが、去年高巻きをした登山者が事故を起こしてしまった。そこで私はこの大岩に煙突に登るようなタラップをつけ、どんな状況でも通行できるようにした。
![伊藤新道復活プロジェクトの記録2022|父から受け継ぐ意思と景色](https://cdn.moneytimes.jp/600/400/BHlkmBtJbicbMRtrKmvoEoqyoFNKNbbP/77f82af4-a1d1-4120-b1f2-113557ef9029.jpg)
施工したのは、クライミング技術に長けているマウンテンワークスのメンバーだ。宙ぶらりんでドリルに力を入れるのは大変だっただろう。
しかし、激しい浸食活動でとめどなく動き続ける湯俣川の巨岩たちを見ていると、やがてこのガンダム岩も無くなり、いずれ思い出になるような気がする。
来年のこと、いつかのこと
来年は、今年出来なかったスラブ(※6)への桟道の設置、峠の茶屋の避難小屋の建設、稜線部危険個所へのステップ、梯子、ロープの設置を8月中旬までに終わらせ本開通としたいと思っている。いずれ伊藤新道の黎明期から廃道に至るまで、復活への道のり、クラウドファンディング、維持管理団体が出来、登山者が当たり前のように通行するようになっても、そのあまりに脆い岩肌と極彩色の異世界観は続いていくのだろう。
伊藤新道との付き合いは、私が初めて全行程を歩いた高校一年生の時からすると、30年になる。その間に2本残っていた吊り橋は崩れ落ち、赤沢の河床などは4mほども浸食されて下がった。そして父も亡くなり、山も川も生命として留まることなど知らない。すべては変化し、思い出となっていく。そんな無常観が凝縮されているのがまた伊藤新道の魅力なのかもしれない。
(※6)表面に凸凹が少ない、滑らかな一枚岩。
文:伊藤圭
写真:井上実花
提供元・.HYAKKEI
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