冬になると美味しくなるカキ(牡蠣)。新鮮さが何よりも大事なこの貝、一大消費地である首都圏にはどこから届いているのでしょうか。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
広島産のカキが空輸で登場
全国屈指のカキ出荷量を誇る広島県。その広島県産生食用カキの出荷が先月10日に解禁されたのですが、それに伴い県内の広島空港では、首都圏に空輸する航空便「空飛ぶ牡蠣 」のPRイベントが実施されました。
このイベントは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、広島から首都圏に向かう航空便の機体が小型化されたのがきっかけで始まったもの。首都圏への出荷に欠かせない航空便が利用できなくなるという危機感から、カキ出荷業者らが航空会社に呼びかけ、航空機を大型化してもらうためのアピールを行ったのが当初の目的でした。
鮮度が勝負の生食用カキは、中1日かかってしまう陸路よりも航空便が圧倒的に有利であり、広島空港からの飛行機は県のカキ産業における生命線と言えます。来年5月末までのシーズン中に、20,000tの航空便による出荷を見込んでいるそうです。
東京湾で育った「江戸前カキ」
遠く離れた広島県からカキが空輸される一方、大都会東京の前海「東京湾」で育ったカキも今、注目を集めています。
広大な干潟「盤洲干潟」があり、貝類の生産が盛んな千葉県木更津市。市内牛込の沖合で行われているカキ養殖は平成30年に始まったばかりのもので、ようやく軌道に乗り先月10日から本格的な出荷が始まっています。
当地での養殖は、干満の差が大きい干潟にカキの稚貝を入れたかごを立て、その中で育てるというもの。潮が引くとかごごと干出し、満ちると海面下に入ることを繰り返す中で、カキの筋肉が強く発達し濃厚な味になるといいます。出荷前に紫外線殺菌装置で殺菌した水の中で畜養しているので、生食も可能です。
このカキは当面は木更津市内での流通が中心となりますが、都心への販路拡大も視野に入れているということです。
どっちが美味しい?
広島産のカキは、カキ筏での養殖が主流となっています。これは沖合に浮かべた筏から、紐でつないだカキの稚貝を海中に下ろして育成するというもので、大量生産が可能です。さらに、たくさんの塊になって育つので水揚げからむき身にする作業が容易であり、結果として比較的安価に流通するのが特徴。味わいがさっぱりしているため、たくさん食べられるのも魅力です。
一方、木更津で行われているような干潟でのカキ養殖は、一つずつばらばらに生育するので殻ごと流通することが多くなります。大量育成には向かない養殖法であり、結果として筏で養殖されたものよりもやや価格が高くなりがちですが、味は明らかに濃厚で、一つ一つに食べ応えがあります。
このように、いずれの産地のカキにも一長一短があり、甲乙つけがたいものとなっています。最終的には好みで選ぶしかないといえそうです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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