多脚型の巨大ロボットはSF作品で根強い人気のある存在です。

そして、現実世界にも実は私たちをワクワクさせる多脚型の重機が作られています。

それはショベルカー(油圧シャベル)の脚部を、クモのような脚に変換した「四脚型ショベルカー」です。

通常のショベルカーには難しい不安定な地形でも、4つの脚を使って移動・作業できます。

複雑な地形で作業する「ウォーキング・ショベルカー」

「メタルギア」や「アーマード・コア」シリーズなど、有名なゲームに登場する多脚ロボットは根強い人気を誇ります。

(左)メタルギアソリッドのピースウォーカー, (右)攻殻機動隊のタチコマ
Credit:(左)GameRinrin(YouTube)_メタルギアソリッド ピースウォーカー HD ミッション25 対ピースウォーカー戦・2 Peace Walker Battle 2(2016), (右)ウェーブ 攻殻機動隊 SAC_2045 タチコマ 2045Ver(Amazon)

クモのような滑らかな動きロボット特有の重厚感の組み合わせが、私たちの心をくすぐるのでしょう。

こうした多脚型の乗り物はSFの存在と考えられがちですが、実の所はかなり昔から現実に存在してきました。

最初の四脚型ショベルカー
Credit:Kaiser_50 years (1965 – 2015)KAISER mobile walking excavators(PDF)

1966年、ヨーゼフ・カイザー氏とその友人アーネスト・メンジ氏が最初のウォーキング・ショベルカーを作りました。

スイスのアルプス山脈における険しい勾配や複雑な地形で作業するために開発されたもので、プロトタイプは後部を車輪、前部を脚にしたシンプルな構造でした。

現在では、この2人がそれぞれ別の会社「カイザー社」「メンジ社」で、クモのように歩くショベルカーの開発・販売を続けています。

4つの脚を自由自在に動かせる
Credit:Kaiser

最新の四脚型ショベルカーは、まさに「動く巨大グモ」のような存在です。

それぞれの脚に伸縮性が備わっており、股、膝、足首に関節があります。

これにより、複雑な地形に合わせて脚の長さや角度を変え、体勢を維持できます。

急斜面でも作業が可能
Credit:Menzi Muck

また製品タイプによっては脚の先に車輪や鋼鉄製の爪が装備されており、素早く移動できるだけでなく、一般的な重機が滑り落ちるような急斜面でも作業を続けられるようです。

さらに複雑な地形を進むためには、腕や手のように扱えるショベルアームが重要な役割を果たします。

アームを使って大きな段差を乗り越える
Credit:New Atlas(YouTube)_Walking “spider” excavators: the mountain goats of earth-moving(2022)

このショベルアームには、ショベルカーの2倍の重量にも対応できる力が備わっています。

この並外れたパワーによって機体を持ち上げ、身の丈以上の段差を上ることが可能なのです。

もちろん99%の作業では、普通の「キャタピラ型ショベルカー」で十分でしょう。

それでも残り1%の過酷な環境では、クモのように自由自在に動ける四脚型ショベルカーが役立ちます。

険しい地形での作業に対応
Credit:Menzi Muck

私たちが憧れてきた「四脚型重機」は現実に存在します。

もし独特の重厚感と繊細な動きをリアルで体感したいなら、カイザー社やメンジ社が出品する展示会に出向き、そこで行われるデモンストレーションを楽しむと良いでしょう。

参考文献
Video: The mesmerizing motion of walking “spider” excavators