病歴があると生命保険に加入できない、と考えている人は少なくない。しかし、近年は病気でも加入できる医療保険が増えているし、病名や治療経過によっては、通常の医療保険・終身保険に加入できる場合もある。生命保険を検討する際は、プランナーに自分の病歴を告げたうえで、どの保険に加入できるのか確認することが大切だ。
病気があると保険に加入できない場合がある
生命保険は、誰でも無条件に加入できるわけではない。加入申し込みを受けた保険会社は告知内容に基づく審査を行う。そして、健康状態に問題があると判断した場合は、「引受不可」の判断をしたり、契約を引受けるにあたって一定の「条件」を付けたりすることがあるのだ。
病気や死亡のリスクが高い人とそうでない人が、同じ条件で同じ保障を受けられるとなると、契約者(被保険者)間の公平性を保つことができない。保険会社はこういった問題を解消すべく、契約引受の可否の判断材料として被保険者の健康状態や病歴を重要視しているのである。
病気でも加入できる医療保険が増えている
しかしながら近年は、持病があったり病気の治療のために通院・服薬していたりする人を対象とした「限定告知型医療保険」が販売されている。これは、「引受基準緩和型医療保険」とも呼ばれるもので、申込時の告知項目が3~5項目に簡素化されている。そのため、病歴があったり、現在通院中であったりする人でも、保険会社所定の告知項目さえクリアすれば保険に加入できるのだ。
例えば、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険株式会社の限定告知型医療保険『新・健康のお守りハート』という商品の場合、申込時に以下の3項目について告知をする。
・今後3カ月以内に、入院または手術の予定があるか
・過去5年以内に、がん・上皮内がん・肝硬変で医師の診察・検査・治療・投薬または入院・手術を受けたことがあるか
・過去2年以内に、病気やケガで入院または手術を受けたことがあるか
そして、これら3つの告知事項を全てクリアすれば、持病があっても、過去に入院歴や手術歴があっても、保険に加入することができるのだ。
限定告知型医療保険に加入する際の注意点
これまで病気が原因で医療保険に加入できなかった人にとって、限定告知型医療保険は非常に魅力的な商品だ。しかし、この種の保険に加入する際は、いくつか注意すべきポイントがある。
●責任開始日から1年の削減期間がある
限定告知型医療保険には、責任開始日から1年間の「削減期間」が設けられている。この間は、給付金額が半分に減額されるのだ。例えば、入院給付日額1万円の保険に加入した場合、削減期間中は入院1日あたり5000円の保険金が給付されることになる。
削減の対象には手術給付金や先進医療に係る技術料等も含まれるため、加入前にはこの点についてしっかり把握しておくことが大切だ。
●一般的な医療保険に比べて保険料が割高
限定告知型医療保険は、通常の医療保険に比べて保険料が割高に設定されている。この種の保険に加入する人には病歴や手術歴、持病、障害などがあることが多く、そうでない人に比べて入院・手術のリスクが高い。保険会社はこのリスクをカバーすべく、通常の医療保険よりも高い保険料を設定しているのだ。
病気があっても通常の保険に加入できる場合がある
ここまで限定告知型医療保険についてみてきたが、過去に入院や手術をしたことがあったり持病があったりしても、“通常”の医療保険に加入できる場合もある。その際には、病気の種類や治療状況、完治後の経過期間などをよく見極めることが重要になってくる。
保険会社は「病気の人を引受けたくない」のではなく、「保険金給付のリスクが高い人を引受けたくない」にすぎない。そのため、病気であったとしてもそれが入院・手術のリスクを伴わないものであったり、病気が完治して一定期間が経過していたりする場合は、健康な人と保険金給付のリスクが同程度であると判断され、通常の医療保険に無条件で加入できることがあるのだ。
●条件付きで通常の医療保険に加入できる場合もある
健康状態に問題があり無条件での医療保険加入が難しい場合でも、「特定部位不担保」という条件を付けて保険に加入できるケースがある。部位不担保とは、体の一部分を保障の対象から外す方法のことをいう。
例えば、半年前に肺気胸で入院し、現在は完治しているとする。この場合、「肺疾患につき5年間」という特定部位不担保条件を付けることで、通常の医療保険に加入できることがあるのだ。この条件が付くと責任開始日から5年間は肺疾患で入院しても保険金給付対象外となるが、他の部位の疾患やケガによる入院については、問題なく保障される。
告知なしで加入できる終身保険もある
死亡時に備えた終身保険の中には、告知なしで加入できるものある。「無選択型終身保険」と呼ばれる商品だ。これは、医師の診査や告知をすることなく無条件に加入できる終身保険で、持病があろうと、過去に大手術を受けていようと、現在がんの治療中であろうと、引受不可になることはない。
ただし、加入後一定期間内に死亡した場合は払込保険料相当額の給付しか受けられなかったり、通常の終身保険に比べて保険料が割高に設定されていたりと、いくつかのデメリットも存在する。
そのため、健康状態に不安がある人が終身保険を検討する際はまず、通常の終身保険に加入できないかどうか調べてみることをおすすめする。
特別条件付きで終身保険に加入できることもある
終身保険も医療保険と同様、病気の種類や治療状況、全治後経過期間などによっては、病歴・入院歴・手術歴があっても無条件で加入できる場合がある。また、無条件での加入が難しい人も、以下のような特別条件を付けることで通常の終身保険に加入できる可能性がある。
●割増保険料を払うことで通常の保障を受ける
そもそも、健康状態に問題がある人が保険に加入できないのは、先述したとおり、健康状態に問題がない人と同条件での保険加入を認めてしまうと契約者間の公平性が担保できなくなることに基づく。そうすると、個々が抱えるリスクに見合った保険料を支払いさえすれば、この問題は解決するはずである。
そこで導入されているのが、「割増保険料」という特別条件なのだ。保険会社は、被保険者の健康状態に問題がある場合でも、割増保険料という特別条件を付けたうえで、契約を引受けることがある。
●保険金の削減を条件に通常の終身保険に加入
割増保険料のほかに、「保険金の削減」という特別条件が付けられることもある。これは、責任開始日から一定期間内に死亡した場合に給付保険金が減額される制度だ。例えば、保険金額1000万円の終身保険に削減期間2年(1年目は3割・2年目は6割)という条件で加入した場合、2年目に死亡すると600万円の給付金が支給される。傷病別の削減期間は保険会社によって異なるが、5年を超えることはない。
病歴がある人が保険に加入する場合の注意点
病歴や入院歴、手術歴がある場合でも、保険に加入できる可能性は十分にある。ただし、健康状態に不安がある人が保険への加入を検討する際は、以下のような点に十分気を付けたい。
●通常の保険に加入できないかどうか調べる
上述のように生命保険は、健康状態に問題がある人でも無条件で、あるいは条件付きで加入できる場合がある。そこで、生命保険への加入を検討する際はまず、営業担当者や代理店に病歴や持病などについて伝え、通常の保険に加入できないかどうか調べてもらうことをおすすめする。公表されてはいないものの、各生命保険会社は独自の契約引受基準を設けており、病名や治療経過、全治後経過期間などを伝えることによって、引受可否についておおよその判断をすることができる。
生命保険会社の中には「仮査定」をできるところもあるから、引受基準だけで判断しかねる場合は、そういったサービスを利用してみるのもひとつの選択肢であろう。
●特別条件の内容について必ず確認する
特別条件付きで通常の医療保険や終身保険に加入する際には、その内容についてしっかり確認しておくことが大切である。
例えば、過去に緑内障を発症したことがある人の場合、保険期間を通して「眼疾患不担保」の特別条件が付くことがある。そうすると、緑内障はもちろん、白内障の治療のために入院したり手術を受けたりする場合でも、保障を受けることはできない。一方、限定告知型医療保険に加入した場合、保険料が高かったり責任開始日から1年の削減期間があったりといったデメリットはあるものの、眼疾患による入院・手術についても保障を受けられる。
大切なのは保険料が安いかどうか、通常の保険に加入できるかどうかではなく、自分のニーズをどれだけ満たすことができるか、という点なのだ。特別条件付きで通常の医療保険に加入できる場合でも、条件の内容によっては限定告知型の保険を検討してみてもいいのではないだろうか。
●告知漏れがないよう十分注意する
告知義務違反があった場合、保険会社は責任開始日から2年以内に限り契約を解除することが認められている。また、責任開始日より2年経過した後でも、告知義務違反の内容によっては保険金の給付を受けられなかったり、詐欺による取り消しを理由として契約を解除されてしまったりする可能性がある。
持病があったり、複数の病院に通っていたりすると、ついつい告知を忘れてしまうこともある。生命保険の申し込みをする際は過去の病歴や通院歴、入院歴、手術歴などについてあらかじめ書き出しておくと安心であろう。
病気があっても保険への加入は可能!ただし判断は慎重に
近年は、病気があっても加入しやすい限定告知型の保険や告知なしで加入できる無選択型終身保険が販売されている。ただ、生命保険の中には、病気があっても無条件で、あるいは特別条件付きで加入できる商品もある。健康状態に不安がある人が保険を検討する際は、自分が加入できる保険にはどのような商品があるのか、情報収集をすることから始めてみてはいかがだろうか。
文・曽我部三代/ZUU online
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