ところが、化学肥料がいっせいに動意づいたのは、ロシアによるウクライナ侵攻のはるかに前の2020年春頃のことだったと言います。

窒素ばかりか、リン酸、カリもふくめて化学肥料の3大要素を全部廃絶して、下肥、堆肥、魚かす、灰、腐食した植物などの有機肥料だけで農業を維持するべきだと唱える人たちもいる。だが、そもそも地球上の人口が大激増に転じたのは化学肥料を量産できるようになってからのことだ。

化学肥料を全廃し、有機肥料だけに頼るとどんなに悲惨な社会になるかは、スリランカの例が実証している。輸出の大黒柱である紅茶用の茶葉輸出額が激減し、農作物一般が凶作に陥って飢餓暴動が起きたのだ。

農作物の不作による経済危機に陥ったスリランカは、観光業と紅茶用に栽培した茶葉の輸出が外貨獲得の2本柱になっていた国です。そんな国で、茶葉の輸出による収入が激減し、GDPの5%強がなくなってしまいました。これは政府による無理な有機農業への転換政策によるものです。

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今後はスリランカのようにさまざまなところで、人為的な食糧不足が起きる可能性が出てくるかもしれません。増田悦佐氏は、『人類9割削減計画』の中で、さまざまな分野でこのような経済行動の本質を逸脱したような行為が見られると言い、その痕跡を明らかにしていきます。