実は意外と各地で食用にされる「フナ」。川や湖など淡水域の魚というイメージが強い彼らですが、食材としてみるとちょっと違うようです。
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食用フナの放流が実施される
福井県あわら市にある入江のような湖「北潟湖」。ここで今月14日、地元の子どもたちによる「マブナの稚魚」の放流が実施されました。
放流を行ったのは、湖の近くにある北潟小学校の1、2年生児童。およそ2万匹の稚魚が放流されたそうです。これらの稚魚は5年で30cmほどに生育し、漁獲に適したサイズとなります。
同湖は県内有数のフナ産地として知られており、まもなく12月にはフナの地引網漁が始まります。冬場にかけては脂ののった旬の「寒ブナ」が漁獲され、その味を楽しみにしている人も多いのだそうです。
食材としてのフナ
フナという魚は、多くの人にとっては「釣りの小魚」もしくは「金魚の仲間」というイメージなのではないでしょうか。しかし実は彼ら、地域によっては重要な食材でもあります。
例えば関東では、利根川下流域の「水郷」地区で小ブナの佃煮が食べられています。中部地方でも、愛知県や岐阜県などの平野部で、フナを大豆と一緒に味噌で柔らかくなるまで煮た「鮒味噌」という郷土料理が今でも根付いています。
また九州でも、佐賀県では「ふなんこぐい」という文化があり、ハレの日や行事の際にフナを昆布で巻いて煮たものを食べます。フナは煮ると骨が柔らかくなることから「骨なし」が転化してフナになったという説もあり、そのことからも各地で食材として人気のあったことが偲ばれます。
「海水」がフナを美味しくする?
そんな各地のフナ食文化ですが、現代の状況から俯瞰してみると、ちょっとユニークな傾向がみられます。それは「日本海側」の地域のほうがフナ食文化が強く残っているということ。
たとえば上記北潟湖のある福井県。同県では若狭湾に面した三方五湖周辺でも盛んにフナが漁獲されています。石川県の邑知潟でも寒ブナの料理が名産となっています。鳥取の湖山池や島根の宍道湖でも冬の主要漁獲物となっています。
とくに宍道湖周辺では刺身用の魚として人気が高く、現地では「最も美味しい魚はフナ」なんて言われることもあるようです。筆者も実際に食べたことがありますが、これらの産地のフナは泥臭さが一切なく、身には強く脂がのり、歯ごたえがあって海の魚と比較しても全く引けを取らない美味しさです。
日本海側であることのほかに、これらの産地に共通しているのは「汽水湖」であるということ。海水と淡水が混ざり合う汽水域は、フナのえさとなるプランクトンが豊富であるほか、泥臭さの発生源となるシアノバクテリアが発生しにくいともいわれます。日本海側は砂丘や砂州が発達した海岸が多く、海岸近くに汽水の湖や池が多数残っています。ここがフナの名産地になるのです。
ただ、試しに太平洋側の汽水域で採れたフナも試してみたのですが、同様に美味しく食べることができました。淡水魚の代表ともいえるフナですが、海水の影響を受けることでもっと美味しくなるのだといえるでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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