医療の世界では:コーラがどこの店でも同じ値段

一般的なサービス業の場合、同じカテゴリーの商品でもお店によって値段は違います。レストランのコーラの値段はそれぞれの店で異なります。出されるコーラは一緒でも、その店の雰囲気や料理の味などが総合的に勘案されて値段が設定されています。

特定の期間には特別料金を設定することもあります。忘年会シーズンにおけるカラオケ店の基本料金は普段より高くなります。「そのサービスを利用したい」と考える人が増えるので、普段より高い値段を設定してもそのサービスを利用してくれるからです。

これが医療サービスになると、少し違います。病院や薬局が提供するサービスが同じであればどこでサービスを受けても同じ価格が設定されています。○○を実施したら■円、△種類の薬を調剤したら★円といった具合に、提供したサービスに応じて受け取れる金額が決まっています。繁忙期だからといって、病院が勝手にサービスの値段を変えることはできません。

例えば、2022年度の調剤報酬には以下の記載があります。

調剤基本料(処方箋の受付1回につき) 1 調剤基本料1 42点(※)

これは薬局に処方箋を持っていくと請求できる費用で、処方箋を薬局に持って行った場合は誰でも原則420円(7割は保険料から出るので、420円の3割分を窓口では支払います)を支払わないといけません。これは、厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)の場で点数が決められています。

※厳密には、どの薬局がどの点数を請求するべきかは、薬局チェーンの規模や病院・クリニックとの関係性の深さで点数は変わりますが、ここではわかりやすく調剤基本料1のみを記載しています。

これは製薬企業の商品である医薬品も同様です。医薬品の値段も、医療サービスの値段と同じように、国が決めるため、どこで買っても、同じ年度であれば、いつ買っても同じ値段です。

(執筆:西川貴清 監修:千正康裕)

metamorworks/iStock

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[千正康裕]の官邸は今日も間違える(新潮新書)

編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2022年11月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。