大分県で、名産の柑橘「かぼす」を飼料に混ぜて育てたフグが開発されました。一体どんな味がするのでしょうか?
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
かぼすで育てたフグの養殖に成功
大分県の隠れた名産のひとつ養殖トラフグ。このたびそんな大分県産トラフグに、ちょっと変わったラインナップが加わりました。
その名は「かぼすフグ」。県の水産養殖協議会内の「トラフグ養殖部会」と大分県が開発した、県の名産である香酸柑橘「かぼす」を飼料に使って育てたトラフグです。
カボスの果皮を餌に混ぜて育成されたこのフグは、2018年に商標登録がなされ、今年7月には生産マニュアルも作成。量産にも成功し、初出荷を迎えることになりました。
先月中旬には生産者の代表が大分県庁を訪問し、11月の初出荷を広瀬勝貞大分県知事に報告。ほのかにカボスが香り、すっきりしてくさみのない味わいだと高評価を受けたそうです。
全国にある「柑橘で育てたフグ」
さて、大分のかぼすフグのように「柑橘を飼料に用いた養殖フグ」は実は他にも存在しています。
中でも比較的早く生産がスタートしたのが、長崎県佐世保で生産されている「九十九島(くじゅうくしま)とらふぐ」。山がちな佐世保周辺では、斜面を生かしたみかんの栽培が盛んなのですが、みかん栽培においては間引き(摘果)された青い果実が廃棄物として少なからず発生します。九十九島とらふぐは、飼料にこの摘果みかんを混ぜ込んでいるのです。
また他の例としては、有機栽培されたレモンを飼料に混ぜて与えた「レモン笠戸ふぐ」があります。瀬戸内海地方にある笠戸島では、温暖で雨の少ない気候を生かしたレモンの生産が盛んで、それを飼料に活用したのです。
柑橘で美味しくなるワケ
しかし、トラフグはときに生きた小魚を捕食することもある肉食性の魚。一体なぜ、柑橘類を食べさせて育てるのでしょうか。
実は、かぼすフグが開発された大分県では、すでにブリやヒラメなどの魚種でかぼすを飼料に用いた養殖が行われてきました。大分県以外でも、高知県や愛媛県など全国各地で、柑橘類を養殖魚の飼料に用いる例が存在します。
日本で養殖が盛んなマダイやブリ、カンパチ、ヒラメなどといった魚はいずれも肉食魚で、自然環境下で柑橘類を食べることはほぼない魚たちです。しかし、これらの魚たちに柑橘類を食べさせると、その成分により味をよくすることができるのです。
食味の向上に有効であると考えられている成分は、大きく2つあります。ひとつは柑橘類の全体に多く含まれているポリフェノール。よく知られた抗酸化成分で、魚においても酸化を防いで風味の劣化を遅らせるほか、生臭みを軽減する作用があります。
もう一つは、柑橘類の果皮に多く含まれるリモネンなどの香気成分。柑橘を食べて育った魚の筋肉中にはこれらの香気成分が含まれることがわかっており、食べるときに柑橘類を絞ってかけるのと同じ作用が得られるのだといいます。
結果として、柑橘類を食べて育った魚は「生臭くなく、さっぱりとして美味しい魚」ものとなるのです。このような「魚を美味しくする植物性飼料」は柑橘以外にも数多く見つかっており、ブドウや茶葉、オリーブなど様々なものが養殖飼料に用いられています。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
The post 「かぼすで育ったフグ」の養殖に成功 実は他にもある柑橘で育つフグ first appeared on TSURINEWS.