世界的な課題となっている「海のプラスチックごみ」。その最大の発生源はビニール袋や使い捨てスプーンではなく「漁具」だと考えられています。

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発泡スチロールのウキを燃料として活用 再利用が進むプラスチック漁具

「発泡スチロールのウキ」が燃料になる?

瀬戸内海に面し、ノリの養殖が盛んな兵庫県明石市。その中心漁協のひとつ江井ケ島漁業協同組合がこのたび、劣化して使えなくなった「ノリ養殖で使う発泡スチロール製のフロート」を燃料として活用する試みを始め、話題となっています。

発泡スチロールのウキを燃料として活用 再利用が進むプラスチック漁具フロートの一種(提供:PhotoAC)

この発泡スチロール製のフロートは、大きいものでは大人が抱えるほどのサイズがあります。これを専用の機械で大きさ0.5mmほどのペレットに粉砕し、そのまま燃料として用いられる形にします。愛媛県の温浴施設などいくつかの施設で活用する計画があるそうです。

全国的にも注目の活動

同漁協では主にノリ養殖の網の固定などの用途で、約2000個のフロートを使用しています。これが紫外線などの影響で徐々に劣化するため、年100~300個ほどが廃棄されています。

しかしフロートは燃えないゴミであることや事業ごみであること、またその大きさもあって個人での処分が難しく、各漁業者が産廃業者に1個約2000円で埋め立て処理を委託してきたのだそうです。

発泡スチロールのウキを燃料として活用 再利用が進むプラスチック漁具漁具に欠かせない「浮き」はプラスチック製(提供:PhotoAC)

しかし発泡スチロールはプラスチックであるため埋め立ててもなかなか分解されず、環境への悪影響が起きる可能性を指摘する声がありました。その処分費用とともに頭を悩ませる厄介な存在だったのです。

そこに登場したのが「ペレット状に加工して再資源化」というアイディア。これに基づき、リサイクル業者と連携してペレットを試作したところ、燃料としてのポテンシャルの高さも確認できたといいます。

フロートはノリ養殖以外の漁業でも広く用いられており、その処理は全国的な課題となっています。円安などの影響で燃料価格が高騰する中、「フロートのペレット燃料化」は、漁具のプラスチックの再利用方法として熱い注目を浴びているのです。

問題となる「漁具のプラスチック」

実は近年、プラスチックごみによる海洋汚染が社会的に注目を集めています。

プラスチックごみ問題に関してはご存じの通り、レジ袋の有料化など「使い捨てプラスチック」の規制は進んでいます。一方でフロートのような漁具のプラスチックは現時点ではあまり使用規制は行われていません。

しかし、紫外線が降り注ぎ塩水に漬かり続けるという過酷な海上環境にさらされる漁具は、プラスチック製品の中では劣化が早く、破片がごみとなりがちです。また強い風雨などで使用中の漁具が流出し、ごみとなって漂流してしまうことも多いです。

発泡スチロールのウキを燃料として活用 再利用が進むプラスチック漁具漂着したプラスチックごみ(提供:PhotoAC)

その結果、世界中で年間なんと64万tもの、プラスチック(を含む)漁具が流出していると考えられています。海岸線の長い我が国には日々大量のプラスチックごみが漂着していますが、海岸で収集されたプラスチックごみのうち、漁具が重量比で60%弱、容積比でも過半数を占めているという調査結果もあります。

言ってしまえば、いま世界で最も海洋環境を汚染しているプラスチックは漁具であると言っても過言ではないのです。ある意味で、コンビニの袋などの使い捨てプラスチックよりも先に対策を取らなくてはいけない存在だといえるでしょう。

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<脇本 哲朗/サカナ研究所>

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